雑損控除と災害減免法はどっちが得?|計算方法と選び方・繰越は5年に

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地震や台風で住まいや家財に被害を受けたとき、所得税を軽くする方法は「雑損控除」と「災害減免法」の2つあります。どちらか有利なほうを選べる制度ですが、計算の仕組みがまったく違うため、人によって答えが逆になります。この記事では、2つの違いと選び方を、その場で比べられる判定ツールつきで整理します。令和8年熊本地震は特定非常災害に指定されており、雑損控除の繰越が通常の3年から5年に延びる点もあわせて解説します。

先に結論。
損害が大きく所得が少ない人は雑損控除が有利になりやすい(引ききれない分を翌年以降に繰り越せるため)
損害が時価の半分以上で、所得が500万円以下なら、災害減免法でその年の所得税が全額免除になる
・令和8年熊本地震は特定非常災害(2026年8月7日指定)のため、雑損控除の繰越期間は5年(通常は3年)
・確定申告で一方を選んだあとでも、修正申告や更正の請求でもう一方に変更できる
控除・節税

2つの制度は「引く場所」が違う

いちばん大事な違いは、雑損控除は所得から引く(所得控除)のに対し、災害減免法は税額そのものを減らす(軽減・免除)という点です。

雑損控除(所得税法72条)

所得から差し引く「所得控除」。次の2つのうち多いほうの金額が控除されます。

①(損害金額+災害等関連支出−保険金等)−(総所得金額等×10%)
②(災害関連支出−保険金等)−5万円
  • 他の所得控除より先に差し引く
  • 引ききれない分は翌年以降に繰越(通常3年・特定非常災害は5年)
  • 所得の上限なし。盗難・横領も対象(詐欺・恐喝は対象外)
  • 住民税にも同じ控除がある

災害減免法(災免法2条)

その年の所得税を直接減らす制度。使えるのは次の2つを両方満たす場合だけです。

・住宅または家財の損害金額がその時価の2分の1以上
・災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下
  • 所得500万円以下 → 所得税の全額免除
  • 500万円超750万円以下 → 2分の1を軽減
  • 750万円超1,000万円以下 → 4分の1を軽減
  • 繰越はできない。対象は災害のみ(盗難・横領は不可)
比べるポイント雑損控除災害減免法
効き方所得から引く(所得控除)税額を減らす(軽減・免除)
所得の制限なし1,000万円以下
損害の程度問わない住宅・家財が時価の2分の1以上
翌年以降への繰越できる(3年/特定非常災害は5年)できない
盗難・横領対象対象外
住民税への効果ありなし(所得税のみ)

ざっくり言えば、被害が甚大で所得が小さい人ほど雑損控除被害はその年の税額を吹き飛ばす程度で所得が500万円以下の人は災害減免法が向きます。ただし境目は微妙なので、次の判定ツールで両方を計算して比べてください。

【判定】あなたはどちらが有利か

4つの数字を入れると、両方の制度で軽くなる税額を計算して比べます。所得税額は源泉徴収票の「源泉徴収税額」や、確定申告書の税額をそのまま入れてください。

※ 災害減免法の判定に使う「住宅・家財の時価の2分の1以上」の要件は、このツールでは判定できません。り災証明書の被害程度(全壊・大規模半壊など)を目安に、当てはまるかどうかをご自身で確認してください。

損害額はいくらと書けばいいのか|国税庁の「合理的な計算方法」

最大のつまずきどころが「損害金額をどう出すか」です。原則は被災直前の時価をもとに計算しますが、住宅の主要構造部に損壊があり、かつ資産ごとに個別に計算するのが難しい場合は、次の簡便な方法で計算してよいことになっています[国税庁]

対象計算式
住宅(取得価額が分かる)(取得価額 − 減価償却費)× 被害割合
住宅(取得価額が分からない)〔(1平方メートル当たりの工事費用 × 総床面積)− 減価償却費〕× 被害割合
家財(取得価額が分かる)(取得価額 − 減価償却費)× 被害割合
家財(取得価額が分からない)家族構成別家庭用財産評価額 × 被害割合
車両(取得価額 − 減価償却費)× 被害割合

とくに使いやすいのが家財の簡便計算です。家じゅうの家財のレシートを集める必要はなく、世帯主の年齢と家族構成から決まる評価額の表に、被害の程度に応じた被害割合を掛けるだけで損害額を出せます。1平方メートル当たりの工事費用の表も、地域別・構造別に国税庁が公表しています。

減価償却費は「取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数」で計算します(経過年数の1年未満の端数は、6か月以上は1年、6か月未満は切り捨て)。被害割合は、り災証明書の判定ではなく国税庁の「被害割合表」で求めます。

対象にならない資産に注意

雑損控除の対象は生活に通常必要な資産に限られます。事業用の固定資産や棚卸資産は対象外(こちらは必要経費になります)。また、別荘、ゴルフ会員権、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・書画・骨とうなどの「生活に通常必要でない資産」も対象外です。

車両は、自分や生計を一にする親族が専ら通勤に使っているなど、生活に通常必要と認められる場合に限って対象になります。レジャー専用の車は対象外と判断される可能性があります。

生計を一にする配偶者・親族が所有する資産も対象にできますが、その人のその年の総所得金額等が58万円以下であることが条件です(令和7年分から。令和2年分〜令和6年分は48万円以下)。

令和8年熊本地震は「特定非常災害」|繰越が5年になる

雑損控除でその年の所得から引ききれなかった損失(雑損失)は、翌年以降に繰り越して各年の所得から控除できます。この繰越期間は原則3年ですが、特定非常災害に指定された災害による損失は5年に延長されます。

令和8年熊本地震は、2026年8月7日に特定非常災害の指定政令が公布・施行されました。あわせて激甚災害にも指定されています。つまり、被害が大きく1年では控除しきれない場合でも、最長で5年にわたって所得税・住民税の負担を軽くできるということです。

この差は小さくありません。たとえば損失が800万円、毎年の総所得金額等が300万円の人なら、初年度で使い切れない分を翌年以降に回すことになりますが、3年と5年では最終的に取り戻せる税額が変わってきます。損害が大きい人ほど、災害減免法よりも雑損控除を選ぶ意味が大きくなるのはこのためです。

申告の前にやること・使える救済

り災証明書と写真

すべての入口は市区町村が発行するり災証明書です。片付けを始める前に、被害の状況をスマートフォンで撮影しておいてください。取壊しや除去の費用は災害等関連支出として控除の対象になるので、領収書は必ず保管します。確定申告のときに添付または提示が必要です。生活再建の手続き全体は熊本地震の被災者支援まとめで整理しています。

申告・納付の期限延長

国税庁は2026年8月4日、令和8年熊本地震に係る地域指定による期限延長を公表しました。対象は熊本県八代市、宇土市、宇城市、八代郡氷川町で、この地域に納税地がある方は申告・納付等の期限が自動的に延長されます。それ以外の地域でも、被災して期限までに申告できない場合は、状況が落ち着いてから申告・納付と同時に申請することで延長が認められます[国税庁]

確定申告を待たずに使える救済

  • 源泉所得税の徴収猶予・還付:給与所得者や公的年金の受給者は、一定の手続きで毎月の源泉徴収を止めたり、すでに納めた分の還付を受けたりできます(国税庁コード8003)。
  • 予定納税額の減額申請:予定納税の通知を受けている個人事業主は、その年の税額が減る見込みなら減額を申請できます。7月の申請は原則7月15日まで、11月の申請は原則11月15日までですが、この提出期限も延長の対象です。
  • 住宅ローン控除の特例:災害で住めなくなった住宅についても、残りの適用年について住宅ローン控除を受け続けられます。さらに被災者生活再建支援法が適用された市区町村の区域内の住宅なら、従前の家屋と新たに再取得した家屋の両方で重複して適用できます(り災証明書と登記事項証明書の添付が必要)。

寄付する側の税の扱い(義援金・支援金の控除)は熊本地震の義援金と寄付金控除、災害に備える平時の準備は台風前のお金の防災にまとめています。

今日やること

  1. 片付ける前に被害の写真を撮る。すでに片付けた場合も、残っている範囲で撮影し、市区町村にり災証明書を申請する。
  2. 取壊し・除去・修繕で支払った領収書を1か所にまとめる(封筒1つでよい)。災害関連支出として控除の対象になる。
  3. 上の判定ツールに概算の数字を入れて、雑損控除と災害減免法のどちらが有利かを確かめる。給与所得者なら、確定申告を待たずに源泉所得税の徴収猶予を勤務先経由で相談する。

よくある質問

雑損控除と災害減免法はどちらか一方しか使えませんか?

同じ年に両方を重ねて使うことはできません。納税者の選択でどちらか有利なほうを選びます。ただし、確定申告で雑損控除を選んだあとでも、修正申告書や更正の請求書を出す際に災害減免法へ変更することが可能です。逆の変更もできます。

損害額を出すのに家財のレシートは必要ですか?

必要ありません。住宅の主要構造部に損壊があり、個別に計算するのが難しい場合は、国税庁の「合理的な計算方法」を使えます。家財なら、世帯主の年齢と家族構成から決まる「家族構成別家庭用財産評価額」に被害割合を掛けるだけで損害額を計算できます。ただし取壊しや除去の費用(災害関連支出)は領収書が必要です。

火災保険や地震保険を受け取ると控除は使えなくなりますか?

使えなくなるわけではなく、保険金等の額を損害金額から差し引いて計算します。保険金が損害金額を上回る場合は、超えた分を災害等関連支出から差し引きます。なお、被災者生活再建支援法に基づく支援金は、この差し引く「保険金等」には含まれません。

雑損控除で引ききれない分はどうなりますか?

翌年以降に繰り越して各年の所得から控除できます。繰越期間は原則3年ですが、令和8年熊本地震のように特定非常災害に指定された災害による損失は5年間繰り越せます。雑損控除は他の所得控除より先に差し引くルールになっています。

熊本県外に住んでいますが、実家が被災しました。控除は使えますか?

その資産の所有者が本人か、生計を一にする配偶者・親族(その年の総所得金額等が58万円以下の方)であれば対象になります。別世帯で生計も別の親の家屋は対象外です。なお申告・納付期限の自動延長は熊本県八代市・宇土市・宇城市・八代郡氷川町に納税地がある方が対象で、それ以外の地域の方は個別に申請することで延長が認められます。

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「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。

公開日:2026年08月13日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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