台風前にやる「お金の防災」|火災保険の水災チェックと雑損控除・災害減免法の選び方

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台風の備えというと水・非常食・モバイルバッテリーを思い浮かべますが、もうひとつ忘れられがちな備えがあります。「お金の防災」——被災したときにお金を取り戻すための準備です。火災保険から水災補償が外れていれば床上浸水でも保険金は出ませんし、片付けを急いで写真を撮り忘れると、罹災証明書の発行も保険金請求も不利になります。そして被災後には、雑損控除と災害減免法という2つの税の救済制度のどちらを選ぶかという判断も待っています。台風シーズン(おおむね7〜10月)が来る前に確認しておきたいポイントを、平時のいまのうちに整理します。

被災後の「お金の流れ」を先に知っておく

被災してから調べ始めると、片付け・避難・仕事の対応に追われて手が回りません。先に全体像を知っておくと、「何を残し、何を申請するか」の判断が速くなります。被災後のお金は、大きく次の3つのルートで戻ってきます。

  1. 保険・共済からの保険金——火災保険・火災共済の風災・水災補償。金額面では最大の柱で、請求先は保険会社・共済です
  2. 公的支援——罹災証明書の被害認定に応じた被災者生活再建支援金・応急修理など。窓口は市区町村です
  3. 税金の減免——確定申告での雑損控除または災害減免法、住民税・固定資産税の条例減免、申告期限の延長・納税の猶予。窓口は税務署と市区町村です

3つのルートすべてに共通して効くのが「被害の記録(写真)」、②と③で必要になるのが罹災証明書です。つまり台風前の備えは、①保険の中身の確認、②記録の準備、③制度の予習——の3点に絞られます。公的支援の全体像は被災者が使える支援制度と税の減免で詳しく解説しています。

備え①:火災保険の「風災」と「水災」は別物——証券を5分だけ確認

台風の損害は、火災保険では主に2つの補償に分かれます。この2つは別々の補償で、片方だけ付けている契約が珍しくありません

補償対象になる損害の例注意点
風災(風災・雹災・雪災)強風で屋根瓦が飛んだ・飛来物で窓ガラスが割れた・カーポートが壊れた多くの契約で基本補償に含まれるが、免責金額(自己負担額)が設定されていることがある
水災川の氾濫・豪雨による床上浸水、土砂崩れ外して契約している場合がある(保険料節約のため外すプランが選べる)。支払いに条件がある

水災補償には、一般に次のような支払条件が設けられています(商品により異なります)。

  • 床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水による損害
  • 建物・家財の再調達価額の30%以上の損害

裏を返すと、浅い床下浸水は水災補償があっても支払い対象外になることが多いということです。また「建物のみ」の契約では、水没した家具・家電(家財)は対象になりません。確認するのはこの4点です。

保険証券・共済証書でいま確認する4点

  • 水災補償が付いているか(ハザードマップで浸水想定区域・土砂災害警戒区域なら特に重要)
  • 対象は建物だけか、家財も含むか
  • 風災の免責金額はいくらか(例:自己負担5万円など)
  • 保険会社・共済の事故受付の連絡先(電話・アプリ)はどこか

逆に、マンションの上層階などで水災リスクが低ければ、水災を外して保険料を下げる選択もあります。大事なのは「知らないうちに外れていた」を防ぐことです。なお、自動車の水没は火災保険ではなく自動車保険の車両保険の領域です。こちらも補償の有無を合わせて確認しておくと安心です。

備え②:写真の記録——「片付ける前に撮る」が鉄則

被災後のあらゆる手続き(保険金請求・罹災証明書・税の減免)で、被害を証明する中心的な証拠になるのが写真です。ところが実際には、衛生面や生活再建を急いで片付け・修理を先に済ませてしまい、被害を証明できなくなるケースが後を絶ちません。

  1. 建物の全景を4方向から撮る(どの建物の被害かが分かるように)
  2. 浸水した場合は「深さ」が分かるように撮る(メジャーや人を並べて、外壁・室内の浸水線を記録)
  3. 被害箇所ごとの近景を撮る(屋根・窓・壁・床・水没した家電や家具の型番まで)
  4. 修理した場合は領収書・見積書を保管する(保険金請求と、後述の雑損控除の「災害関連支出」の証拠になる)

市区町村が発行する罹災証明書は、災害対策基本法にもとづき被害の程度(全壊・半壊・準半壊・一部損壊など)を証明する書類で、公的支援や税・保険料の減免の入口になります。被害が比較的軽い場合は、写真をもとに現地調査を省略して発行する「自己判定方式」を採用する自治体が多く、ここでも片付け前の写真が効きます。なお、保険金の請求自体には罹災証明書は通常不要(保険会社が独自に損害を確認します)で、請求権には3年の時効(保険法第95条)があります。修理業者を装って「保険金で無料修理できる」と勧誘し高額な手数料を取る悪質な申請サポート業者とのトラブルが増えているため、請求は必ず自分で保険会社・代理店へ連絡してください。

備え③:税の救済は2本立て——雑損控除と災害減免法の違い

住宅や家財が被害を受けたときの所得税の救済には、雑損控除(国税庁タックスアンサーNo.1110)と災害減免法(同No.1902)の2つがあり、どちらか有利な方を選択します。仕組みがまったく違うので、違いを先に押さえておきましょう。

項目雑損控除災害減免法
仕組み損失額を所得から差し引く所得控除その年の所得税そのものを減免
対象災害・盗難・横領による生活用資産の損失(詐欺・恐喝は対象外)災害で住宅・家財の損害額が時価の2分の1以上の場合
所得制限なしその年の所得金額の合計額が1,000万円以下
減免の大きさ控除額=次の(1)(2)の多い方
(1) 差引損失額−総所得金額等×10%
(2) 災害関連支出−5万円
所得500万円以下:全額免除
500万円超750万円以下:2分の1軽減
750万円超1,000万円以下:4分の1軽減
引ききれない分翌年以後3年間繰り越せる(特定非常災害は5年間)繰越なし(その年限り)
住民税住民税の計算でも控除される所得税のみ(住民税は市区町村の条例減免を別途申請)

数字で比較:所得400万円・損害330万円のケース

前提:総所得金額等400万円。台風で住宅・家財に損害500万円(時価ベース)、片付け費用(災害関連支出)30万円、保険金200万円を受領。

雑損控除:差引損失額=500万+30万−200万=330万円
(1) 330万−400万×10%=290万円 (2) 30万−5万=25万円 → 多い方の290万円を所得控除。所得税・住民税の両方が大きく下がり、引ききれなければ翌年以後3年間に繰り越し。

災害減免法:損害額330万円が住宅・家財の時価の2分の1以上で、所得400万円(500万円以下)ならその年の所得税は全額免除。ただし住民税はそのままで、翌年への繰越もなし。

選び方のおおまかな目安は次のとおりです。

  • 損害が所得に比べて非常に大きい(控除しきれない)→ 繰り越せる雑損控除が有利になりやすい
  • 所得500万円以下で損害が時価の半分以上 → 災害減免法で所得税全額免除。ただし住民税まで含めると雑損控除が勝つ場合があるため、両方試算するのが確実
  • 所得1,000万円超、または損害が時価の半分未満 → 選択肢は雑損控除のみ

どちらも年末調整では受けられず、確定申告が必要です(この点は医療費控除と同じです)。損失額の計算には、国税庁が示す簡便な計算方法(住宅・家財の取得価額や面積から算定する方法)があり、税務署に相談すれば案内してもらえます。なお、被災した人を支援する側の税制(義援金・寄附金控除)は義援金と寄附金控除の記事で解説しています。

申告・納付そのものも「延長・猶予・減免」できる

被災直後は申告や納付どころではありません。制度側にも、それを前提にした仕組みがあります。

制度内容窓口
申告・納付期限の延長(国税)国税庁が地域を指定して一律延長する「地域指定」と、個別の申請による「個別指定」がある。個別指定は災害のやんだ日から2か月以内の範囲で延長(タックスアンサーNo.8001)税務署
納税の猶予(国税)災害で財産に相当な損失を受けた場合など、申請により原則1年以内の範囲で納税が猶予される税務署
予定納税の減額・源泉徴収の猶予被災した年の予定納税の減額申請、給与などの源泉所得税の徴収猶予・還付(タックスアンサーNo.8004)税務署(源泉は勤務先経由の手続きあり)
地方税の減免住民税・固定資産税・国民健康保険料などが、被害の程度に応じて条例により減免される。申請には罹災証明書が必要になるのが一般的で、申請期限(納期限までなど)は自治体ごとに異なる市区町村

ポイントは、どれも原則「申請しないと始まらない」ことです。被災して家計が苦しいときこそ、「延長・猶予・減免という選択肢がある」と知っているかどうかで差がつきます。年間の税金の締切は税金カレンダーで確認できます。

今日やること

今日やること

  1. 火災保険・共済の証券(またはアプリ)を開き、水災補償の有無・家財の有無・風災の免責金額の3点を確認する
  2. 保険会社・共済の事故受付の連絡先をスマホに登録し、家の外観4方向と各部屋を撮影して「被災前の状態」を残しておく
  3. 市区町村のハザードマップで自宅の浸水想定・土砂災害リスクを確認する(水災補償の要否判断の材料になる)

よくある質問

Q. 床下浸水でも火災保険の保険金は出ますか?

A. 出ないことが多いです。水災補償は一般に「床上浸水」「地盤面から45cmを超える浸水」「再調達価額の30%以上の損害」といった支払条件があり、浅い床下浸水はこれを満たさないためです。ただし商品によって条件は異なるので、まず加入先に確認してください。税の面では、床下浸水の損害や片付け費用も雑損控除の対象になり得ます。

Q. 雑損控除と災害減免法は、結局どちらを選べばいいですか?

A. 両方の要件を満たすなら有利な方を選択できます。目安は、所得500万円以下で損害が住宅・家財の時価の半分以上なら災害減免法(所得税全額免除)、損害がそれ以上に大きく翌年以降に繰り越したい場合や住民税も下げたい場合は雑損控除です。境目のケースは両方試算するか、税務署・税理士に相談してください。

Q. 罹災証明書がないと保険金はもらえませんか?

A. いいえ。保険金の請求に罹災証明書は通常不要で、保険会社が独自に損害を確認します。罹災証明書が必要になるのは、被災者生活再建支援金などの公的支援や、地方税・保険料の減免を申請するときです。発行は市区町村で、軽微な被害なら写真による自己判定方式で発行される場合があります。

Q. 台風で車が水没しました。火災保険で補償されますか?

A. 自動車は火災保険の家財に含まれず、自動車保険の車両保険の領域です。台風・洪水による水没は車両保険で補償されるのが一般的ですが(地震・噴火・津波は原則対象外)、契約タイプによるため加入先に確認してください。車両保険の保険金で補填されなかった損失は、雑損控除の計算に含められる場合があります(通勤用など生活に通常必要な資産に限る)。

参考リンク(出典)

※ 本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な情報提供です。火災保険・共済の補償内容や支払条件は契約により、地方税の減免は自治体により異なります。個別の判断は加入先の保険会社・共済、税務署・税理士、市区町村にご確認ください。

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公開日:2026年08月06日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項