2026年10月1日の酒税改正は「ビールが安くなる」ばかりが話題ですが、同じ日にチューハイ・サワー・缶ハイボールも増税されます。350ml缶あたりの酒税は28円から35円へ7円の引き上げ。ビール系の税率が3段階で見直されてきたのに対し、チューハイ類が増税されるのはこれが初めてです。この記事では、家計への影響を本数から試算できるようにしたうえで、「なぜストロング系は9%までしかないのか」というアルコール分10度の崖と、9月末までにやっておくと得なことを整理します。
・チューハイ・サワー・缶ハイボール(アルコール分10度未満で発泡性のもの)は350ml缶で28円→35円、500ml缶で40円→50円
・毎日1本(350ml)飲む人は年間およそ2,600円の負担増(消費税込みで約2,800円)
・ビールとの酒税の差は35.35円から19.25円へほぼ半減。ビールに戻る動機が強まる
・買いだめは効きにくい。改正日に流通在庫へ手持品課税がかかるため、店頭の旧価格は長くは続かない
何がどう変わるか|350ml缶で28円から35円へ
酒税法では、チューハイやサワー、缶ハイボールの多くが「その他の発泡性酒類」という区分に入ります。定義は「ビール、発泡酒以外でアルコール分10度未満であって発泡性を有するもの」。この区分の税率が、2026年10月1日に1キロリットルあたり80,000円から100,000円へ引き上げられます[国税庁]。
| 区分 | 改正前(〜2026年9月) | 改正後(2026年10月〜) | 350ml缶あたり |
|---|---|---|---|
| ビール | 181,000円/kL(63.35円) | 155,000円/kL(54.25円) | ▲9.10円 |
| 発泡酒(麦芽比率25%未満)・新ジャンル | 134,250円/kL(46.99円) | 155,000円/kL(54.25円) | +7.26円 |
| その他の発泡性酒類 (チューハイ・サワー・缶ハイボール等) | 80,000円/kL(28円) | 100,000円/kL(35円) | +7.00円 |
この改正は2017年(平成29年)度の税制改正で決まった段階的な見直しの最終ステージです。似た酒類のあいだで税率に差があると、税金の安さを狙った商品開発に開発力が向かってしまう——そうした状態を改め、税収を増やさない前提(税収中立)で税率をそろえるのがねらいでした[財務省]。ビール系3種の一本化についてはビール類の酒税改正2026で詳しく解説しています。
【試算】あなたの晩酌、年間いくら増える?
缶のサイズと1週間に飲む本数を選ぶと、酒税の年間負担がいくら変わるかを計算します。比較のため、同じ本数をビールに置き換えた場合も出します。
※ 表示しているのは酒税額の変化です。店頭価格は原材料費や物流費、各社の価格政策でも動くため、値札の変動と一致するとは限りません。
ビールとの税額差は35円から19円へ|「ビール回帰」が起きる理由
今回の改正でいちばん大きいのは、金額そのものよりビールとの差が縮むことです。
| 350ml缶あたりの酒税差 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| ビール − チューハイ | 35.35円 | 19.25円 |
| 新ジャンル − チューハイ | 18.99円 | 19.25円 |
ビールとチューハイの税額差はほぼ半分になります。一方、新ジャンル(第3のビール)とチューハイの差はほとんど変わりません。つまり「発泡酒・新ジャンルからチューハイへ」という節約の流れは今回あまり動かず、「チューハイからビールへ」の距離だけが縮むのが今回の改正の特徴です。
ビールは1本あたり9.1円下がり、チューハイは7円上がるので、同じ1本を選ぶときの税金の開きは16.1円分だけ縮まります。価格差が完全になくなるわけではありませんが、「安いからチューハイ」という理由は確実に弱まります。家計の飲み代をどう見直すかは、ビール類の酒税改正2026の試算ツールとあわせて考えてみてください。
なぜストロング系は9%までなのか|アルコール分「10度の崖」
缶チューハイの棚を見ると、度数は3%・5%・7%・9%と並んでいて、10%以上のものはほとんど見当たりません。これは偶然ではなく、酒税法の区分がそこで切り替わるからです。
「その他の発泡性酒類」に入る条件はアルコール分10度未満であること。10度以上になるとこの区分から外れ、中身に応じて混成酒類のリキュール(13度未満で120,000円/kL=350mlあたり42円)や、蒸留酒類のスピリッツ(21度未満で200,000円/kL=同70円)の税率が適用されます[国税庁]。
つまり9度の缶チューハイは350mlで28円(改正後35円)ですが、これが10度になった瞬間、リキュール扱いなら42円に跳ね上がります。度数を1度上げるだけで税額が5割増える——だから各社は9%で止めてきました。
なお、租税特別措置法にはアルコール分の低い蒸留酒類・リキュールの税率を80,000円/kLに抑える特例がありますが、これは「発泡性のない酒類」に限られるため、炭酸入りの缶チューハイには使えません。
興味深いのは、今回の増税でこの崖が半分に縮むことです。改正前は9度(28円)と10度(42円)で14円の差がありましたが、改正後は35円と42円で7円差になります。税制上のブレーキは弱まる計算です。
もっとも、市場の方向は逆を向いています。厚生労働省が2024年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、生活習慣病のリスクを高める飲酒量の目安を1日あたりの純アルコール量で男性40g以上・女性20g以上と示しました[厚生労働省]。500mlで9%の缶は純アルコール量がおよそ36gで、女性の目安を大きく超え、男性の目安にも迫ります。この指針を受けて、大手メーカーは8%以上の缶チューハイの新商品を出さない方針を示すなど、高アルコール商品の見直しが進んでいます。税制のブレーキが緩む一方で、健康面のブレーキが強まっている——これが2026年の缶チューハイをめぐる状況です。
9月末までにやっておくと得なこと|買いだめは効くのか
「10月に上がるなら9月のうちに買っておこう」と考えたくなりますが、期待するほどは効きません。理由は2つあります。
理由①:流通在庫にも差額が課税される(手持品課税)
酒税は本来、製造場から出荷した時点でかかる「蔵出し課税」です。そのため理屈のうえでは、9月中に出荷された在庫は旧税率のままのはずです。ところが酒税率が改正されるときは、改正日の午前0時時点で流通段階にある課税済みの酒類について、新旧税率の差額を調整する手持品課税(増税の場合)・手持品戻税(減税の場合)が行われます。2026年10月1日分の申告期限は2026年11月2日です[国税庁]。
つまり、一定量以上の在庫を抱える販売業者には差額分の負担が生じるため、「10月以降も旧税率の安い在庫が店頭に並び続ける」ということにはなりにくいのです。逆にビールは戻税の対象なので、値下げが遅れる理由も小さくなります。
理由②:得られる額が小さく、賞味期限がある
350ml缶1本で得するのは酒税7円(消費税込みで約7.7円)。24本入り1ケースを買いだめしてもおよそ185円です。缶チューハイの賞味期限は商品によって異なり、缶の底や側面に表示されています。数ケース単位で買い込むと期限内に飲みきれないこともあるため、金額に見合うかは冷静に考えたいところです。
むしろ実利が大きいのは、10月以降の買い方を変えることです。ビールが9.1円下がってチューハイが7円上がるため、これまで価格差でチューハイを選んでいた人は、10月以降は改めて値札を見比べる価値があります。納税や買い物の支払い方でどれだけ差が出るかは税金のキャッシュレス納付もあわせてどうぞ。
今日やること
- いつも買う缶のサイズと度数を確認する(350mlか500mlか、5%か9%か)。上の試算ツールに本数を入れて、年間の負担増を具体的な金額で把握する。
- 10月以降はビールとチューハイの値札を並べて比べる。税額差が19.25円まで縮むので、これまでの「安いほう」が変わっている可能性がある。
- 買いだめするなら1〜2ケースまでにとどめ、缶に表示された賞味期限を確認してから決める。
よくある質問
チューハイは2026年10月にいくら値上がりしますか?
酒税額は350ml缶で28円から35円へ7円、500ml缶で40円から50円へ10円上がります。消費税10%を含めた値上がり要因は350ml缶でおよそ7.7円です。ただし店頭価格は原材料費や各社の価格政策でも動くため、実際の値札の変動幅は商品によって異なります。
缶ハイボールも増税の対象ですか?
対象です。ウイスキーを使った缶ハイボールでも、アルコール分が10度未満で発泡性があれば「その他の発泡性酒類」に区分され、チューハイと同じ税率が適用されます。多くの缶ハイボールは7%前後なので、350ml缶で7円の増税になります。
なぜ缶チューハイに10%以上の商品が少ないのですか?
アルコール分10度以上になると「その他の発泡性酒類」の区分から外れ、リキュールなら350ml換算で42円、スピリッツなら70円と税率が大きく上がるためです。9度に抑えることで税負担を低くできるという税制上の理由があります。2026年10月の改正でこの差は14円から7円に縮みますが、健康ガイドラインを受けた各社の高アルコール商品見直しが同時に進んでいます。
9月中に買いだめすれば安く買えますか?
効果は限定的です。酒税率の改正時には、改正日の午前0時時点で流通段階にある在庫について新旧税率の差額を調整する「手持品課税」が行われるため、10月以降に旧税率の安い在庫が長く残るわけではありません。また1本あたりの差は7円程度で、1ケース買いだめしても約185円です。
日本酒やワインの税率も変わりますか?
2026年10月の改正で変わるのは発泡性酒類(ビール・発泡酒・新ジャンル・その他の発泡性酒類)と、アルコール分の低い蒸留酒類・リキュールの特例税率です。清酒・果実酒は2023年10月の改正ですでに100,000円/kLにそろえられており、今回の変更はありません。
出典:国税庁「酒税率一覧表(令和5年10月1日〜令和8年9月30日)」/国税庁「酒類の手持品課税(戻税)について」/財務省「酒税に関する資料」/厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務のご判断は税務署・税理士にご確認ください。



