治験バイトの税金はいくらから?負担軽減費は雑所得|20万円・58万円のライン

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「治験バイト」と呼ばれることが多い治験ボランティア。実際に受け取るお金は給料ではなく「負担軽減費」で、税金の世界では労働の対価ではない雑所得として扱われます。通院1回7,000円〜1万円、入院型なら数十万円になることもあり、源泉徴収されずに全額振り込まれるため「税金はかからない」と誤解されがちです。この記事では、①いくらから確定申告が必要か(会社員の20万円ルール・専業の95万円)②学生が親の扶養から外れる58万円のライン③無申告のリスク——を、令和7年度税制改正後の最新の金額で整理します。

負担軽減費とは——治験は「バイト」ではない

治験は、新しい薬の承認に必要なデータを集めるために行われる臨床試験で、国が定めたルール(GCP=医薬品の臨床試験の実施の基準)のもとで実施されます。参加者に支払われるお金は給料や報酬ではなく、通院の交通費・拘束時間・生活制限といった負担を軽くするための「負担軽減費」という位置づけです。金額も「参加の誘因にならないように」という考え方で設計されており、業界の資料では通院1回あたり7,000円が標準とされています。

タイプ金額の目安
通院型(1回の来院ごと)7,000円〜1万円程度
入院型(1泊あたり)2万円〜3万円程度。長期入院の案件では総額が数十万円になることも

※ 金額は複数の治験募集機関が公開している情報にもとづく目安で、案件・実施医療機関によって異なります。

税金のポイントは次の3つです。

  • 雇用契約ではないので、給与所得ではありません。大学病院などが参加者に配る案内文書でも「所得税法上は雑所得」と明記されています
  • 源泉徴収されず全額が振り込まれるのが一般的。「税金が引かれていない」のは非課税だからではなく、自分で申告する仕組みだからです
  • 負担軽減費から会場までの交通費など直接かかった費用は経費として差し引けます。領収書や記録を残しておきましょう

この記事は「税金」だけを扱います

治験に参加するかどうかの判断(試験の内容・体への影響など)は、この記事では扱いません。参加の是非は、実施医療機関からのインフォームド・コンセント(説明と同意)にもとづいてご自身で判断してください。本記事は治験への参加をすすめるものではありません。

いくらから確定申告が必要か——立場別の早見表

申告が必要になるラインは「いくら受け取ったか(収入)」ではなく、交通費などの経費を引いた後の「所得」で判定します。負担軽減費60万円でも交通費が3万円かかっていれば、雑所得は57万円です。

立場確定申告が必要になる目安
会社員・年末調整済みのバイト給与以外の所得の合計が年20万円超(いわゆる20万円ルール)。治験の雑所得は、副業・ポイ活など他の給与以外の所得と合算して判定します
専業主婦(夫)・無職・給与のない学生合計所得が基礎控除以下なら所得税ゼロで申告不要。令和7年分からは合計所得132万円以下の基礎控除が95万円に引き上げられました(改正前48万円)
個人事業主・フリーランス金額にかかわらず、毎年の確定申告に雑所得として合算して申告します

会社員の20万円ルールの正確な条件(2か所給与の場合など)と副業全般の申告手順は、副業の確定申告の解説で詳しく整理しています。

「48万円まで大丈夫」は古い情報です

令和7年度税制改正で基礎控除が見直され、令和7年分以後は合計所得132万円以下の人の基礎控除は95万円になりました(改正は令和7年12月1日施行・令和7年分から適用)。ネット上には改正前の「48万円」のままの解説が多く残っているので注意してください。ただし後述のとおり、親の扶養のラインは別(58万円)です。

20万円以下でも住民税の申告は別

20万円ルールは所得税だけの特例です。住民税にはこの特例がないため、確定申告をしない場合でも、市区町村への住民税の申告は原則必要です。また住民税の基礎控除は43万円のままで、単身なら合計所得45万円程度(自治体により異なる)を超えると住民税がかかります。所得税ゼロでも住民税だけかかるゾーンがある点に注意してください。

学生が親の扶養から外れるライン——バイトの感覚は通用しない

親の扶養(扶養控除)に入れるのは、令和7年分から子の合計所得が58万円以下の場合です(改正前48万円)。ここで落とし穴になるのが、治験の負担軽減費には給与所得控除が使えないことです。

  • バイト給与だけの場合:給与所得控除(最低65万円)を引けるので、年収123万円まで扶養内(123万円−65万円=所得58万円)
  • 治験だけの場合:控除がないので、雑所得58万円を超えた時点で扶養から外れます。入院型の長期案件に数回参加すると届き得る金額です
  • 併用の場合:バイト給与90万円(給与所得25万円)+治験の雑所得30万円=合計所得55万円なら扶養内。治験が34万円になると合計59万円で扶養外

19〜22歳の子については、令和7年に新設された特定親族特別控除により、所得58万円を超えても123万円までは親の控除が段階的に縮小する仕組みになり、「1円超えたら親の控除が一気にゼロ」ではなくなりました(満額は63万円)。とはいえ扶養のラインをまたぐと親の税負担・手当や勤務先の扶養手当に影響し得るため、超えそうなら事前に親と共有するのが安全です。バイトと扶養の関係の全体像は学生バイトと親の扶養の解説をどうぞ。

健康保険の扶養(130万円基準)は別の判定

税金の扶養と、健康保険の被扶養者(いわゆる130万円の壁)は別の制度です。治験のような一時的な収入をどう扱うかは健康保険組合・協会けんぽなど保険者によって運用が異なるため、大きな金額を受け取る場合は親の勤務先の保険者に確認してください。

健康食品モニター・美容モニターとの違い

治験と混同されやすいのが、健康食品・化粧品などのモニター案件です。どちらも受け取ったお金は原則として雑所得ですが、性質が異なります。

項目治験(医薬品)健康食品・美容モニター等
根拠・監督薬機法・GCPにもとづく臨床試験民間の調査・宣伝活動(GCPの対象外)
受け取るお金負担軽減費(労働の対価ではない)謝礼・報酬(役務の対価に近い場合も)
支払い方法銀行振込が一般的・源泉徴収なし現金のほかポイント・商品のことも
税務上の扱い雑所得原則雑所得(ポイントや商品でも経済的利益として課税対象になり得る)

「現金じゃなくてポイントでもらったから関係ない」とはならない点に注意。ポイントの課税関係はポイ活とフリマの税金の解説で詳しく扱っています。モニター謝礼も治験の負担軽減費も、20万円ルールの判定では合算です。

「振込だからばれない」は通用しない——支払調書と無申告のリスク

負担軽減費は医療機関や治験施設支援機関から銀行振込で支払われ、支払う側には誰にいくら払ったかの記録が残ります。支払調書などの法定調書が税務署に提出される場合もあり、マイナンバー制度のもとで支払い記録から所得を把握される可能性は十分あります。

申告が必要なのにしなかった場合のペナルティは軽くありません。

  1. 無申告加算税——税務調査を受けてからの申告では、納税額50万円までは15%、50万円超300万円以下は20%、300万円超は30%が上乗せ。調査の連絡が来る前に自主的に期限後申告すれば5%まで軽減されます
  2. 延滞税——本来の納期限からの日数に応じて利息に相当する延滞税がかかります
  3. 気づいたら早く申告——期限後でも自主申告が最も傷が浅く、法定申告期限から1か月以内の自主申告など一定の場合は無申告加算税がかからないこともあります

今日やること

今日やること

  1. 今年受け取った(受け取る予定の)負担軽減費を、振込記録と参加時の案内文書で書き出す。会場までの交通費の記録・領収書も一緒に集める
  2. 自分の立場のライン(会社員20万円・専業95万円・扶養内の学生58万円)と、経費を引いた雑所得の見込みを見比べる
  3. 扶養内の学生で58万円を超えそうなら、今日のうちに親へ共有する(親の扶養控除・扶養手当・健康保険に関わるため)

よくある質問

Q. 治験の負担軽減費は非課税ではないのですか?

A. 非課税ではありません。労働の対価ではないため給与にはなりませんが、所得税法上は雑所得として課税対象です。源泉徴収されずに全額振り込まれるのは「税金がかからない」からではなく、必要な場合に自分で申告する仕組みだからです。

Q. 会社員で治験の所得が年20万円以下なら、何もしなくていいですか?

A. 所得税の確定申告は不要ですが、20万円ルールは所得税だけの特例です。住民税にはこの特例がないため、市区町村への住民税の申告は原則必要です。なお医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下でも治験の所得を含めて申告します。

Q. 学生です。いくらまでなら親の扶養のままでいられますか?

A. 令和7年分からは合計所得58万円以下が扶養のラインです。治験の負担軽減費は給与所得控除が使えないため、治験だけなら経費を引いた雑所得58万円が上限の目安です。バイト併用なら「給与収入−65万円」と治験の雑所得の合計で判定します。19〜22歳は特定親族特別控除により、58万円を超えても親の控除が段階的に残ります。

Q. 申告が必要だったのに忘れていました。どうすればいいですか?

A. できるだけ早く期限後申告をしてください。税務調査の連絡が来る前に自主的に申告すれば無申告加算税は5%に軽減されます。調査を受けてからだと最大30%の無申告加算税に加えて延滞税もかかります。

参考リンク(出典)

※ 数値・制度は2026年8月時点の情報にもとづきます。負担軽減費の相場は複数の治験募集機関の公開情報による目安で、案件・実施機関により異なります。本記事は一般的な情報提供であり、治験参加をすすめるものではありません。個別の税務判断は税務署・税理士にご相談ください。

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「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。

公開日:2026年08月22日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項