EVの購入補助金は「もらって終わり」ではありません。国のCEV補助金には登録日から原則4年(車種により3年)の保有義務=処分制限期間があり、期間内に売却・下取り・廃車をするなら、処分の前に承認申請をして、残り期間分の補助金を返納するのがルールです。黙って売ると全額返納を求められることもあります。令和7年度補正でEVの補助上限は最大130万円に引き上げられており、返す側になったときの金額も大きくなりました。何年待てばよいのか、途中で手放すときの手続きと返納額の計算式、事故全損などの例外、東京都など自治体補助金側の別ルール、中古で買う側の注意まで、次世代自動車振興センターの一次情報で整理します。
処分制限期間は何年か:乗用車・軽自動車は4年が基本
CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)を受けた車両は、交付規程・業務実施細則で「取得財産等」と位置づけられ、処分を制限する期間(処分制限期間)が車種ごとに定められています。令和7年度補正の応募要領(別表6)では、自家用車両(白ナンバー)は次のとおりです。
| 種類(自家用) | 処分制限期間 |
|---|---|
| 乗用車(普通自動車・小型自動車) | 4年 |
| 貨物車(積載量を問わず) | 4年 |
| 軽自動車(軽EVなど) | 4年 |
| 側車付二輪自動車 | 3年 |
| ミニカー(第一種原動機付自転車) | 3年 |
| 原付二輪 | 3年 |
- 起算点は車両の登録日です(「登録日から3年または4年間」)。補助金の振込日ではありません
- レンタカー用(貸自動車業用)車両は、総排気量2リットル以下の乗用車・積載量2トン以下の貨物車・軽自動車などが3年に短縮されます。リース用車両はレンタカー扱いではなく自家用側の年数です
- 処分制限期間や申請様式は補助金を受けた年度によって異なります。自分の車が何年ルールかは、受給した年度の応募要領・様式で確認してください(センターの財産処分ページに年度別様式があります)
「処分」に当たる行為は売却だけではありません。①目的に反する使用、②譲渡(売却・下取りを含む)、③交換、④貸し付け、⑤廃棄、⑥担保に入れること——の6つが財産処分と定義されています。家族への名義変更や、ローン以外で車を担保に差し入れる行為も対象になり得ます。
期間内に手放すとき:財産処分承認申請の流れ
やむを得ず期間内に売却・廃車をする場合は、処分してから届け出るのではなく、処分の前に承認を得るのが原則です。手続きは郵送で、次の流れになります。
- 財産処分承認申請書を提出:受給年度に対応した様式をセンターのホームページから取得して記入・郵送します(交付決定番号が不明なら車検証の写しを添付)
- センターから財産処分承認通知書と報告書用紙が届く
- 車両を処分(売却・下取り・廃車など)
- 財産処分報告書を提出:処分内容(時期・売却額など)を報告します
- 返納額のお知らせが届いたら納付:期限はお知らせから20日後です
買い替え予定の人は特に注意
処分制限期間内の車を手放して新しい補助対象車を買う場合、前の車の補助金返納が完了するまで、新しい車への補助金は交付されません。手続きには時間がかかるため、買い替えを決めたらすぐに承認申請を出すのが安全です。
返納額はいくらか:残り期間分を月割りで返す
令和4年度補正予算以降の補助金を受けた車両は、処分制限期間の「残存期間」に応じた按分で返納額が決まります。売却額がいくらだったかは関係ありません。
返納額 = 補助金額 × 残存期間 ÷ 処分制限期間
残存月数 = 処分制限期間の月数(4年=48か月)− 経過月数
※ 経過月数には登録月と処分月の両方を含めて数えます
【センター公表の計算例】補助金額55万円・令和7年2月登録・令和7年11月処分・処分制限期間4年の場合
→ 550,000円 ×(48−10)÷ 48 = 435,416円
補助金額55万円・4年ルールの車で、処分時期ごとの返納額の目安を並べるとこうなります。
| 処分時期(経過月数) | 残存月数 | 返納額の目安 |
|---|---|---|
| 約1年(経過12か月) | 36か月 | 412,500円 |
| 約2年(経過24か月) | 24か月 | 275,000円 |
| 約3年(経過36か月) | 12か月 | 137,500円 |
| 4年経過後 | 0か月 | 返納不要・手続き不要 |
令和7年度補正で引き上げられた上限額(EVで最大130万円)を受けた車なら、同じ式で計算すると1年目に手放した場合の返納額は約100万円にもなります。売却額から返納額を差し引いた手取りで損得を考えないと、「高く売れたつもりが赤字」になりかねません。
令和4年度以前に補助金を受けた車両は計算方法が違います。原則「売却額 × 補助金比率(補助金額÷車両購入費用)」で算定し、売却額が残存簿価相当額を下回る場合は残存簿価で計算します(令和2年度第3次補正・環境省分は上の按分方式)。自分の年度の方式はセンターの案内で確認してください。
黙って売るとどうなるか:無断処分のペナルティ
「4年も監視されないだろう」は通用しません。センターは補助金を交付した車両の保有状況を定期的に調査しており、登録情報から処分は把握されます。
- 承認を得ずに処分制限期間内の財産処分が判明した場合、補助金の全額の返納を求められることがあります(按分ではなく全額です)
- 不正な方法による処分と判断されると、交付規程に基づき年10.95%の加算金を上乗せして返納を求められることがあります
事前に承認申請をすれば残存期間分の按分返納で済むものが、無断だと全額+加算金になり得る——手続きをするかどうかで負担が大きく変わります。
事故全損・災害・盗難など:返納が不要になる例外
本人に責任のないやむを得ない事由については、返納不要の扱いが用意されています。令和7年度補正の応募要領では次の3つです。
- 車両が天災等により走行不能となり、抹消登録(廃車)した場合
- 車両が過失のない事故により走行不能となり、抹消登録した場合
- その他センターが特に認める場合
ただし返納不要の場合でも、「財産処分承認申請書」と証明書類を提出してセンターの承認を得る手続き自体は必要です。黙って廃車にすると無断処分と区別がつきません。盗難は例外として明記されていませんが、「その他センターが特に認める場合」の判断になり得るため、警察への届出(受理番号)などの書類をそろえてセンターに相談してください。なお、自分に過失のある事故での全損や、経済的な事情での売却は例外に当たらず、通常の按分返納です。
東京都など自治体の補助金は「別ルール・別手続き」
国のCEV補助金と、都道府県・市区町村の補助金はそれぞれ独立した制度です。国に返納すれば自治体分も済む、ということはありません。
- 東京都:ZEV車両購入補助金にも処分制限があり、処分前に「取得財産等処分承認申請書」を提出して承認を受け、返還額計算シートで返還額を算定する仕組みが用意されています。売却・廃車のほか、都外への転居や使用の本拠の都外移転が処分扱いになる場合があるとされるため、引っ越し予定がある人は要注意です。期間・該当行為の詳細は、クール・ネット東京の手引きで必ず確認してください。都の制度の全体像は東京都EV補助金ガイドで解説しています
- その他の道府県・市区町村:保有義務の年数(3〜5年など)や返還の要否は自治体ごとに異なります。交付要綱に「財産処分の制限」条項があるのが通常なので、受給した自治体の窓口・要綱で確認してください。各地の制度は47都道府県のEV補助金まとめから確認できます
国+都+市区町村の三重取りをした人は、手放すときも三か所それぞれの手続きが必要になり得る、と覚えておいてください。
中古でEVを買う側・下取りに出す側の注意
- 返納義務を負うのは補助金を受けた本人です。処分制限期間中の車を中古で買っても、返納義務が買い主に引き継がれるわけではありません
- 下取り・買取店への売却も「譲渡」として財産処分に該当します。販売店が手続きを案内してくれることも多いですが、申請の主体はあくまで受給者本人です。商談の際は「補助金の返納がいくらになるか」を計算してから売却額と比べましょう
- 国のCEV補助金は新車が対象で、中古車の購入では受けられません。一方、自治体によっては中古EVを対象にした補助があるため、中古で買う人はお住まいの都道府県の制度を確認する価値があります
- 中古EV市場の価格には「新車購入者が補助金を受けている」ことが織り込まれがちです。買う側は相場が割安に見える理由として、売る側は「補助金分だけ高くは売れない」現実として、返納ルールとあわせて頭に入れておくと損得を見誤りません
- 保有中の税金(自動車税種別割の免税・重課の扱いなど)はEVの税金と2026年の自動車税制で整理しています
今日やること
今日やること
- 車検証で登録日を確認し、処分制限期間(原則4年)の満了日をカレンダーに登録する(満了後の売却なら手続きも返納も不要)
- 期間内に手放す可能性が出たら、「補助金額 × 残存月数 ÷ 48」で返納額の概算を出し、売却額と比べてから商談する
- 都道府県・市区町村の補助金も受けた人は、それぞれの交付要綱の「財産処分」条項と申請窓口を確認しておく
よくある質問
Q. 4年(処分制限期間)を過ぎれば、自由に売却してよいのですか?
A. はい。処分制限期間は車両の登録日から起算し、満了後の売却・廃車に承認申請や返納は不要です。期間は車種と受給年度で異なり(自家用の乗用車・軽自動車は令和7年度補正で4年、ミニカー・原付二輪等は3年)、自分の年度の応募要領・様式で確認してください。
Q. ディーラーへの下取りや家族への譲渡も「処分」になりますか?
A. なります。財産処分には譲渡(売却・下取りを含む)・交換・貸し付け・廃棄・担保提供・目的外使用が含まれます。相続による所有者変更は財産処分の手続き(振込前なら計画変更)で個別に対応するため、事前にセンターへ相談してください。
Q. 事故で全損になった場合や盗難に遭った場合も返納が必要ですか?
A. 天災や過失のない事故で走行不能となり抹消登録した場合は、承認手続きをすれば返納不要です。盗難は例外として明記されていませんが「その他センターが特に認める場合」の判断になり得るため、警察への届出書類等をそろえてセンターに相談してください。自己都合の売却や過失のある事故は通常の按分返納です。
Q. 承認を得ずに売却するとどうなりますか?
A. センターは交付車両の保有状況を定期的に調査しており、無断の処分が判明すると補助金の全額返納を求められることがあります。不正な処分には年10.95%の加算金が上乗せされる場合もあります。事前に承認申請をすれば残存期間分の按分返納で済むため、必ず処分前に手続きしてください。
参考リンク(出典)
※ 本記事は2026年8月時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。処分制限期間・様式・返納額の算定は補助金を受けた年度により異なります。個別の判断は次世代自動車振興センター・各自治体の窓口・税理士等の専門家にご確認ください。



