国民健康保険料は、同じ埼玉県内でも住む市町村で大きく違います。同じ40歳単身・給与年収400万円でも、所沢市は年約41.9万円、川島町は年約31.2万円——差は年約10.7万円。埼玉県が公表する令和8年度(2026年度)の市町村別税率で、全63市町村を同一条件で計算し、ランキングとシミュレーターにしました。そして重要なのは、埼玉県はこの差を令和9年度に「準統一」、令和12年度に「完全統一」する方針を公表していること。いま安い自治体に住んでいる人ほど、これから上がる可能性があります。
国保料の仕組み——どこが自治体ごとに違うのか
国民健康保険料(税)は、前年の所得から43万円を引いた額にかかる「所得割」と、加入者1人あたり定額の「均等割」を柱に、自治体によっては世帯あたり定額の「平等割」、固定資産税額に応じた「資産割」を組み合わせて決まります。受けられる給付は全国共通なのに、値段だけが自治体ごとに違うのがこの制度の特徴です。
| 区分 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 医療分(基礎賦課分) | 所得割+均等割(+平等割・資産割) | 全加入者 |
| 後期高齢者支援金分 | 同上 | 全加入者 |
| 介護納付金分 | 同上 | 40〜64歳のみ |
| 子ども・子育て支援金分(令和8年度から新設) | 所得割・均等割・18歳以上の加算 | 全加入者 |
令和8年度からは従来の3区分に「子ども・子育て支援納付金分」が加わり、4階建てになりました。埼玉県の市町村平均は所得割0.27%・均等割1,667円ほどで、賦課限度額は3万円です。
埼玉県は所得割+均等割の「2方式」がほぼ全域で、世帯あたり定額の平等割を課しているのは朝霞市・長瀞町・神川町の3市町村だけです。世帯人数による有利不利が小さいのが特徴です。また神川町・朝霞市・長瀞町は固定資産税額に応じた「資産割」も課しており、持ち家の評価額によってはランキングの数字より高くなります。低所得世帯には均等割・平等割の7割・5割・2割軽減(申請不要・ただし世帯全員の所得申告が前提)があり、未就学児の均等割はさらに半額になります。
国保料シミュレーター——63市町村を一括計算
年齢・収入・家族構成を入れると、選んだ自治体の保険料の概算と、全63市町村のランキングを同時に計算します。
| 順位 | 自治体 | 年間保険料(概算) | 月あたり |
|---|
※ 概算です。所得割は「前年の総所得金額等-基礎控除43万円」に料率を乗じて計算し、均等割・平等割には法定軽減(7割・5割・2割)と未就学児の均等割半額を反映しています。※印の神川町・朝霞市・長瀞町は固定資産税額に応じた「資産割」が別途加算されるため、実際はこれより高くなります。自治体独自の減免、月割・端数処理、6割・4割軽減は反映していません。正確な金額は必ずお住まいの市町村の窓口・試算ページでご確認ください。
ランキング:40歳単身・給与年収400万円のモデルケース
比較の物差しとして、40歳単身・給与年収400万円(給与所得276万円)の年間保険料を全63市町村で計算した結果です。
| 順位 | 自治体 | 年間保険料(概算) | 月あたり |
|---|---|---|---|
| 1 | 川島町 | 311,840円 | 約25,987円 |
| 2 | 戸田市 | 318,617円 | 約26,551円 |
| 3 | 和光市 | 322,600円 | 約26,883円 |
| 4 | 神川町※ | 322,947円 | 約26,912円 |
| 5 | 越生町 | 328,670円 | 約27,389円 |
| 6 | 松伏町 | 334,398円 | 約27,866円 |
| 7 | 蕨 市 | 349,070円 | 約29,089円 |
| 8 | 杉戸町 | 355,860円 | 約29,655円 |
| 9 | 吉川市 | 357,260円 | 約29,772円 |
| 10 | 寄居町 | 358,763円 | 約29,897円 |
| 11 | 熊谷市 | 359,292円 | 約29,941円 |
| 12 | 羽生市 | 359,357円 | 約29,946円 |
| 13 | 秩父市 | 360,262円 | 約30,022円 |
| 14 | ときがわ町 | 361,184円 | 約30,099円 |
| 15 | 鳩山町 | 362,435円 | 約30,203円 |
| 16 | 北本市 | 362,748円 | 約30,229円 |
| 17 | 朝霞市※ | 363,810円 | 約30,318円 |
| 18 | 白岡市 | 364,526円 | 約30,377円 |
| 19 | 横瀬町 | 364,988円 | 約30,416円 |
| 20 | 八潮市 | 366,546円 | 約30,546円 |
| 21 | 小鹿野町 | 366,570円 | 約30,548円 |
| 22 | 新座市 | 369,771円 | 約30,814円 |
| 23 | ふじみ野市 | 369,773円 | 約30,814円 |
| 24 | 桶川市 | 371,156円 | 約30,930円 |
| 25 | 東秩父村 | 371,392円 | 約30,949円 |
| 26 | 川越市 | 372,751円 | 約31,063円 |
| 27 | 本庄市 | 374,018円 | 約31,168円 |
| 28 | 深谷市 | 374,657円 | 約31,221円 |
| 29 | 飯能市 | 375,374円 | 約31,281円 |
| 30 | 川口市 | 378,138円 | 約31,512円 |
| 31 | さいたま市 | 378,900円 | 約31,575円 |
| 32 | 長瀞町※ | 379,338円 | 約31,612円 |
| 33 | 鴻巣市 | 379,732円 | 約31,644円 |
| 34 | 美里町 | 380,209円 | 約31,684円 |
| 35 | 小川町 | 381,700円 | 約31,808円 |
| 36 | 宮代町 | 382,211円 | 約31,851円 |
| 37 | 吉見町 | 384,655円 | 約32,055円 |
| 38 | 富士見市 | 385,220円 | 約32,102円 |
| 39 | 三芳町 | 385,725円 | 約32,144円 |
| 40 | 行田市 | 388,250円 | 約32,354円 |
| 41 | 東松山市 | 388,347円 | 約32,362円 |
| 42 | 志木市 | 388,530円 | 約32,378円 |
| 43 | 加須市 | 389,374円 | 約32,448円 |
| 44 | 蓮田市 | 390,032円 | 約32,503円 |
| 45 | 幸手市 | 391,655円 | 約32,638円 |
| 46 | 三郷市 | 392,191円 | 約32,683円 |
| 47 | 毛呂山町 | 393,180円 | 約32,765円 |
| 48 | 鶴ヶ島市 | 397,550円 | 約33,129円 |
| 49 | 狭山市 | 397,585円 | 約33,132円 |
| 50 | 滑川町 | 398,140円 | 約33,178円 |
| 51 | 久喜市 | 399,481円 | 約33,290円 |
| 52 | 入間市 | 400,559円 | 約33,380円 |
| 53 | 日高市 | 400,568円 | 約33,381円 |
| 54 | 坂戸市 | 401,992円 | 約33,499円 |
| 55 | 上里町 | 403,145円 | 約33,595円 |
| 56 | 上尾市 | 403,795円 | 約33,650円 |
| 57 | 皆野町 | 404,347円 | 約33,696円 |
| 58 | 越谷市 | 404,448円 | 約33,704円 |
| 59 | 嵐山町 | 406,867円 | 約33,906円 |
| 60 | 伊奈町 | 407,169円 | 約33,931円 |
| 61 | 春日部市 | 414,357円 | 約34,530円 |
| 62 | 草加市 | 416,583円 | 約34,715円 |
| 63 | 所沢市 | 418,577円 | 約34,881円 |
読みどころ
安いほうの上位は川島町(約31.2万円)・戸田市(約31.9万円)・和光市(約32.3万円)・神川町(約32.3万円)。高いほうは所沢市(約41.9万円)・草加市(約41.7万円)・春日部市(約41.4万円)・伊奈町(約40.7万円)です。注目したいのは都心通勤圏の戸田市が2位(約31.9万円)、和光市が3位(約32.3万円)と上位に入っていること。「都心に近いほど高い」わけではありません。県内最大のさいたま市は31位(約37.9万円)とちょうど中位、川口市が30位、川越市が26位です。最高の所沢市と最安の川島町の差は年約10.7万円。所得が上がるほど所得割の料率差が効くため、自営業で所得が高い人ほど差は開きます。
なぜ同じ県内でこんなに違うのか
受けられる保険給付は全国共通です。医療費の自己負担割合も、高額療養費制度も同じ。つまり「同じサービスに、自治体ごとに違う値段」が付いている状態です。差が生まれる主な理由は3つあります。
- 一般会計からの独自繰入(税金による補填)の規模——保険料を抑えるために自治体が独自に繰り入れており、その大きさが違う
- 加入者の所得水準・年齢構成・医療費水準——高齢者が多い、医療費が高い地域ほど必要額が大きくなる
- 賦課方式の違い——平等割や資産割を採用するかどうかで、単身世帯・持ち家世帯の負担が変わる
埼玉県は保険税水準の統一を掲げ、「県内のどこに住んでいても、同じ世帯構成・同じ所得であれば同じ保険税となること」を目標にしています。スケジュールは令和9年度に準統一(収納率の差など一部を除いて統一)、令和12年度に完全統一。県は「標準保険税率未満の税率を設定している市町村については、税率が上がることになる」と明記しています。つまりいまランキング上位(=安い)の自治体ほど、これから上がる可能性が高いということです。令和8年度の県の標準保険税率は医療分で所得割8.11%・均等割49,530円。ご自身の自治体の料率がこれを下回っているなら、統一に向けて引き上げが進むと考えておくのが安全です。
知っておきたい実務——引っ越し・退職・軽減
- 保険料は住民票のある自治体で月割計算。引っ越すと転入月から新しい自治体の料率になり、前の自治体の分は月割で精算されます(転入・転出の届出は14日以内)。年の途中の引っ越しでも二重払いにはなりません。
- 会社員(勤務先の健康保険)には関係ありませんが、退職して国保に入ると突然この差に直面します。退職直後は前年所得で計算されるため高額になりがちで、任意継続・国保・家族の扶養の3択を必ず比較してください(退職後の健康保険3択・転職・退職時の税金と手続き)。
- 軽減(7割・5割・2割)は申請不要ですが、世帯全員の所得申告が前提です。収入がなくても住民税の申告をしていないと軽減が受けられないことがあります。
- 保険料の計算構造そのものは国民健康保険の計算で解説しています。個人事業主で保険料の負担が重い場合はマイクロ法人と社会保険料も選択肢になります。
- 保険料だけで住む場所を決めるのはおすすめしません。住居費・通勤・子育て支援まで含めた損得は東京と地方どっちがお得、東京都の数字は東京62区市町村の国保料ランキングで比較できます。
今日やること
- 上のシミュレーターに自分の年齢・収入・家族構成を入れて、いまの自治体の順位と年額を確認する
- いま安い自治体にお住まいなら、令和9年度の準統一で税率が上がる前提で家計を見ておく
- 退職予定・フリーランス転向予定なら、国保と任意継続の金額を比較する(退職後の健康保険3択)
- 世帯全員の所得申告が済んでいるか確認する(軽減の適用条件です)
ほかのアクションは手取りアップ・アクションリストへ。
よくある質問
埼玉県で国民健康保険料がいちばん安い市町村はどこですか?
40歳単身・給与年収400万円のモデルケースでは川島町の年約311,840円が最安、所沢市の年約418,577円が最高で、差は年約106,737円です(令和8年度(2026年度)の公表料率で試算)。年齢・収入・世帯人数で順位は変わるため、本文のシミュレーターでご自身の条件を入れて確認してください。
埼玉県の国保料の差はいつまで続きますか?
埼玉県は保険税水準の統一を進めており、令和9年度に準統一、令和12年度に完全統一する方針を公表しています。統一後は「県内のどこに住んでいても、同じ世帯構成・同じ所得であれば同じ保険税」になります。県は標準保険税率を下回る税率の市町村は税率が上がることになると明記しており、いま安い自治体ほど今後の引き上げ幅が大きくなる可能性があります。
さいたま市の国保料は高いのですか?
県内63市町村中31位(年約378,900円)で、ちょうど中位です。最高は所沢市の年約418,577円、最安は川島町の年約311,840円で、さいたま市はその中間に位置します。
なぜ自治体によって保険料が違うのですか?
受けられる給付は全国共通ですが、一般会計からの独自繰入の規模、加入者の所得・年齢構成、医療費水準、賦課方式(平等割や資産割を採用するか)が自治体ごとに異なるためです。なお独自繰入は解消していく方針が示されており、いま安い自治体も今後上がる可能性があります。
引っ越したら保険料はいつから変わりますか?
転入した月から新しい自治体の料率で月割計算され、前の自治体の分は月割で精算されます。転入・転出の届出は14日以内が原則で、年の途中の引っ越しでも二重払いにはなりません。
会社員にも国保料の地域差は関係ありますか?
在職中は勤務先の健康保険なので関係ありません。ただし退職して国保に切り替えるとき、フリーランスに転向するとき、家族が国保に入るときに直面します。特に退職直後は前年所得で計算されるため高額になりやすく、任意継続との比較が重要です。
参考リンク(出典)
本記事のランキングは、埼玉県が公表する令和8年度(2026年度)の市町村別 国民健康保険料(税)率をもとに、当サイトが同一条件で試算したものです。金額はすべて概算であり、実際の保険料は各市町村の決定によります。
※ 本記事の金額はすべて概算のシミュレーションです。自治体独自の減免、6割・4割軽減、資産割、端数処理等は反映していません。正確な金額は必ずお住まいの市町村にご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は各自治体窓口・税理士・社会保険労務士等にご相談ください。



