最終更新:2026年8月27日/本記事は資源エネルギー庁の燃料油価格支援事業サイト・石油製品価格調査、国税庁タックスアンサー、各府省庁の公表資料と、2026年8月25日以降の報道をもとに作成しています。補助の支給単価は毎週改定されるため、給油前の最新値は公式サイトでご確認ください。
先に結論から。高市首相は2026年8月25日、ガソリンを1リットル170円程度に抑える補助を続けると表明し、片山さつき財務相と赤沢亮正経済産業相に必要な基金の確保を指示しました。7月には「9月から175円へ」という見直し案が報じられていましたが、当面は170円の目安が維持されます。ここで多くの人が引っかかるのが、旧暫定税率25.1円は2025年末に廃止されたはずなのに、なぜ1リットル32.5円もの補助が続いているのかという点です。減税と補助金は、財源も出口もまったく別のしくみだからです。この記事では税の内訳を1円単位まで分解し、走行距離別に自分の家計でいくらになるかまで落とします。
いま、1リットルあたり32.5円が投じられている
現在の補助は「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」という名前の事業です。石油元売・輸入事業者に対して、卸価格を引き下げる原資として補助金を出すしくみで、家計に直接振り込まれるものではありません。
支給単価は前週(8月20日〜26日)の26.0円から、8月27日以降は32.5円へ6.5円拡大しました。単価は毎週見直されるため、給油した週によって効いている金額が違います。
いまの補助は二階建てです。
| 区分 | 金額(8月27日〜) | 決まり方 |
|---|---|---|
| 変動分 | 26.5円/L | 全国平均価格が170円を超えた分を補う。毎週改定 |
| 調整単価 | 6.0円/L | 代替調達コストを反映。月ごとに固定(2026年8月分) |
| 合計 | 32.5円/L | — |
対象はガソリンだけではありません。軽油・灯油・重油も同じ32.5円、航空機燃料は13.0円が支給されています。冬に灯油を使う地域や、軽油を大量に使う運送・建設の事業者にとっては、ガソリン以上に大きな話です。
「補助金」と聞くと申請書を書いて受け取るものを想像しますが、この事業は申請も手続きも不要です。元売の卸価格が下がり、その分だけ給油所の店頭価格が下がる形で還元されます。裏を返すと、自分がいくら得しているのかが実感しにくいしくみでもあります。補助金の一般的な流れとは違う点に注意してください。
169.9円の中身を1円単位で分解する
8月26日に経済産業省が公表した石油製品価格調査によると、8月24日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル169円90銭で、4週ぶりの値上がりでした。この169.9円がどう構成されているかを分解します。
| 内訳 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| ガソリン本体 | 約123.0円 | 原油コスト・精製・輸送・給油所の利幅 |
| 揮発油税(国税) | 24.3円 | 本則税率。旧暫定税率25.1円は廃止済み |
| 地方揮発油税(国税) | 4.4円 | 地方へ譲与される分 |
| 石油石炭税 | 2.8円 | うち地球温暖化対策税0.76円 |
| 消費税10% | 約15.4円 | 上の税を含めた金額に対してかかる |
| 合計 | 169.9円 | 税の合計は約46.9円(小売価格の約27.6%) |
ここで見落とされがちなのが、消費税が「ガソリン税を含んだ金額」に対してかかっていることです。揮発油税・地方揮発油税・石油石炭税の合計31.5円にも10%が乗っているため、税に税がかかる形になります。この点は国税庁も明確にしていて、揮発油税や石油石炭税は消費税の課税標準に含まれる、と整理されています(この扱いが軽油では変わります。後述します)。
では、補助と減税が無かったら店頭価格はいくらだったのか。単純計算で並べます。
補助32.5円は卸価格の段階で効くため、小売価格では消費税ぶんを含めて約35.75円の押し下げになります。旧暫定税率25.1円も同じく税込みで約27.61円。合わせると1リットルあたり約63円が、減税と公費で今の価格を支えている計算です。あくまで単純化した試算で、実際には需要や為替の動きで価格は変わりますが、規模感としては押さえておく価値があります。
暫定税率は廃止された。それでもなぜ補助が要るのか
時系列を整理します。
- 2025年11月28日:旧暫定税率を廃止する法律が参議院本会議で全会一致により成立。
- 2025年12月31日:ガソリンの旧暫定税率25.1円/Lが廃止。揮発油税・地方揮発油税は本則の28.7円/Lに戻る。
- 2026年4月1日:軽油引取税の旧暫定税率17.1円/Lが廃止。税率は32.1円から本則の15円/Lへ。1976年の導入から50年で「当分の間」が終わった形です。
- 2026年7月21日:補助の目安を9月から175円へ引き上げる案が報じられる。
- 2026年8月25日:高市首相が170円程度の維持を表明。財源確保を指示。
減税は済んでいるのに補助が続いているのは、2つが別の目的の道具だからです。旧暫定税率の廃止は税率そのものを恒久的に下げる措置で、原油価格や為替がどう動いても効果は25.1円で固定されています。一方の補助は、原油高・円安で市場価格が跳ね上がったときに、その上振れ分を国費で吸収する変動型の措置です。今回は中東情勢による原油価格の不透明さが理由に挙げられています。
| 比べる軸 | 旧暫定税率の廃止(減税) | 燃料油価格の補助 |
|---|---|---|
| 効果の大きさ | 25.1円/Lで固定 | 週ごとに変動(現在32.5円/L) |
| 期間 | 恒久(法改正が必要) | 時限。政府判断で縮小・終了できる |
| 財源 | 歳入が年1.5兆円程度減る(国・地方合計) | 予備費から基金に積み増す歳出 |
| 手続き | 国会で法律を改正 | 予備費の閣議決定で機動的に対応 |
| 価格の見え方 | 税率が下がるので透明 | 本来の市場価格が見えにくくなる |
今回の財源は、2026年度補正予算(6月成立)に計上された「中東情勢等対応予備費」2兆5,000億円から、数千億円規模を基金へ積み増す方針と報じられています。予備費は国会の個別審議を経ずに使えるため機動的ですが、それは裏返せば、支出の是非を国会で議論する機会が減るということでもあります。国民負担率の議論と同じく、財源の出どころまで含めて見る必要があります。
補助のもうひとつの弱点は「誰に効いているかを選べない」点です。1リットルあたり定額で価格を下げるため、燃料を多く使う人ほど恩恵が大きくなります。長距離を走る運送事業者や地方在住で車が生活必需品の世帯に届く一方で、公共交通で生活する人や車を持たない世帯には届きません。所得に応じた線引きもありません。効果が広く早いという長所と、対象を絞れないという短所は表裏一体です。
あなたの家計では、年間いくらか
実感が湧く形にします。燃費15km/Lの車を前提に、いまの支給単価32.5円(税込み換算で約35.75円)と旧暫定税率25.1円(同約27.61円)が1年間続いたと仮定した場合の金額です。
| 年間走行距離 | 年間の給油量 | 補助による軽減 | 旧暫定税率廃止による軽減 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000km | 約333L | 約11,900円 | 約9,200円 | 約21,100円 |
| 10,000km | 約667L | 約23,800円 | 約18,400円 | 約42,200円 |
| 15,000km | 約1,000L | 約35,800円 | 約27,600円 | 約63,400円 |
| 20,000km | 約1,333L | 約47,700円 | 約36,800円 | 約84,500円 |
年1万km走る標準的な家庭で、年間およそ4万円。補助の側が半分以上を占めているのがポイントです。恒久措置である減税より、いつ終わってもおかしくない補助のほうが金額が大きい状態にあります。補助が縮小されれば、その分は素直に家計の負担増になります。
燃費のいい車ほど恩恵が小さくなるため、燃費20km/Lなら上の表の75%、10km/Lなら1.5倍で見てください。電気自動車に乗り換えた場合はガソリン税も補助も無関係になる代わりに、自動車関係の税制がまるごと変わります。この点はEVの税金と自動車税制改正で扱っています。
175円案はどこへ行ったのか
2026年7月21日、複数の報道機関が「補助の目安を9月から175円へ引き上げる案が政府内に浮上した」と報じました。行楽で燃料需要が高まる8月までは今の水準を維持し、夏休みが終わってから縮小するという段取りです。基金の残高が細っていたことが背景にありました。
その1か月後の8月25日、高市首相は170円程度の維持を表明します。理由として挙げられたのは「中東情勢は依然として不透明で原油価格の見通しが困難」であること。同時に、支援のあり方は今後の物価動向や経済への影響を見ながら柔軟に検討するとも述べており、出口の議論そのものが消えたわけではありません。
つまり、175円案は撤回されたのではなく先送りされたと読むのが妥当です。仮に目安が5円上がれば、支給単価はその分だけ縮小し、店頭価格は税込みで5円強上がります。年1万km走る世帯なら年間約3,700円の負担増に相当します。今後の焦点は次の3つです。
- 基金の残高と予備費の追加投入額:どれだけ積み増すかで、いつまで持つかが決まります。
- 原油価格と為替:市場価格が下がれば変動分は自動的に縮小し、170円を下回れば変動分はゼロになります。補助は減っても店頭価格は下がるため、その局面は家計にとって悪い話ではありません。
- 年末の税制改正議論:旧暫定税率の廃止で失われた年1.5兆円程度の税収をどう扱うかは、まだ決着していません。令和9年度の税制改正要望とあわせて追う価値があります。
電気・ガス料金への支援も同じ構造で動いています(電気・ガス補助の再開)。エネルギー価格の対策は、税で下げるのか、補助で吸収するのか、それとも所得に応じた給付で配るのかという選択の問題です。
事業者向け:ガソリンと軽油で経理が変わる
ここからは車両や重機を使う個人事業主・法人向けの実務です。燃料費は経費として落とせますが、ガソリンと軽油では消費税の扱いが違います。これは補助や暫定税率の廃止とは無関係に、もともとそうなっています。
| 油種 | 上乗せされる税 | 消費税の課税標準 | 実務での扱い |
|---|---|---|---|
| ガソリン | 揮発油税・地方揮発油税・石油石炭税 | 含まれる | 領収書の総額がそのまま課税仕入れ |
| 軽油 | 軽油引取税(本則15円/L)・石油石炭税 | 軽油引取税は含まれない | 軽油引取税を区分して不課税で処理 |
国税庁のタックスアンサーNo.6313が根拠です。揮発油税や石油石炭税は製造業者が納税義務者なので価格の一部として消費税の課税標準に含まれます。一方の軽油引取税は購入者(引取者)が納税義務者であるため、請求書や領収書で税額が明示され、預り金や立替金などの科目で明確に区分している場合には課税標準に含まれません。
実務上のポイントは3つです。
- 軽油引取税が区分されていない領収書は、全額を課税仕入れとして処理してしまいがちです。給油所によって記載が異なるため、区分表示があるかを確認してください。区分がない場合は総額を課税仕入れとして扱うことになります。
- 暫定税率廃止で軽油引取税は32.1円から15円へ下がりました。区分経理をしている場合、不課税で処理する金額が1リットルあたり17.1円ぶん減り、その分だけ課税仕入れが増えています。2026年4月1日をまたぐ処理では、単価の切り替えに注意が必要です。
- 燃料油の補助金は帳簿に出てきません。交付先は石油元売・輸入事業者であり、給油する側は値下がりした価格で買うだけです。事業者が雑収入として計上する必要はありません。自治体が独自に実施する燃料費支援を受け取った場合は、そちらは収入計上が必要になるので混同しないでください。
個人事業主の経費の考え方は個人事業主の税金にまとめています。
今日やること
- 資源エネルギー庁の燃料油価格支援事業のサイトで、今週の支給単価を確認する。給油のタイミングを1週ずらすだけで単価が数円違うことがある。
- 直近の給油レシートを1枚見て、リットル数と単価を書き出す。年間走行距離と燃費が分かれば、この記事の表で自分の恩恵額をすぐに当てはめられる。
- 軽油を使う事業者は、領収書に軽油引取税の区分表示があるかを確認する。無ければ給油所に区分記載を依頼するか、総額を課税仕入れとして処理する方針を決めておく。
手取りを増やす具体策は手取りアップ・アクションリストにまとめています。
よくある質問
ガソリン補助金はいつまで続きますか。
終了日は決まっていません。2026年8月25日に高市首相が1リットル170円程度に抑える措置の継続を表明し、必要な基金の確保を指示しました。ただし同時に、支援のあり方は物価動向や経済への影響を見ながら柔軟に検討するとも述べています。7月には目安を9月から175円へ引き上げる案が報じられており、縮小の議論自体は続いていると見るのが妥当です。
暫定税率が廃止されたのに、なぜ補助金が必要なのですか。
目的が違うためです。旧暫定税率の廃止は税率を恒久的に下げる措置で、効果は1リットル25.1円で固定されています。一方の補助は、原油価格や為替の変動で市場価格が上振れした分を国費で吸収する変動型の措置で、現在の支給単価は32.5円です。減税だけでは吸収しきれない価格上昇に対応するために併用されている形になります。
補助金は自分で申請する必要がありますか。
必要ありません。補助金は石油元売・輸入事業者に交付され、卸価格の引き下げを通じて給油所の店頭価格に反映されます。消費者や事業者が申請書を出したり、受け取った金額を申告したりする手続きはありません。事業者の帳簿でも、値下がりした燃料費を経費計上するだけで、雑収入としての計上は不要です。
ガソリンと軽油で経理処理が違うと聞きました。
消費税の扱いが違います。揮発油税や石油石炭税は製造業者が納税義務者であるため消費税の課税標準に含まれますが、軽油引取税は購入者が納税義務者であり、請求書や領収書で税額が明示され預り金などの科目で明確に区分されている場合は課税標準に含まれません。根拠は国税庁のタックスアンサーNo.6313です。なお軽油引取税は2026年4月1日に暫定税率17.1円が廃止され、本則の15円になりました。
灯油や軽油にも補助は出ていますか。
出ています。2026年8月27日以降の支給単価は、ガソリン・軽油・灯油・重油がいずれも1リットル32.5円で同額、航空機燃料は13.0円です。暖房に灯油を使う地域の世帯や、軽油を大量に消費する運送・建設の事業者にとっては、ガソリンと同等かそれ以上の影響があります。
参考リンク
- 資源エネルギー庁「燃料油価格の激変緩和措置」特設サイト(週ごとの支給単価・調整単価・対象油種)
- 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」調査の結果(レギュラーガソリンの全国平均・都道府県別価格)
- 資源エネルギー庁「ガソリンの暫定税率の廃止でガソリン代はどうなるの?」(廃止の内容と価格への反映)
- 国税庁 タックスアンサー No.6313「酒税、たばこ税などの個別消費税の取扱い」(軽油引取税と揮発油税で消費税の課税標準が異なる根拠)
- 財務省「揮発油税等・石油石炭税の税率」(本則税率と税収の規模)
- 総務省「地方税制度(軽油引取税)」(軽油引取税の納税義務者と税率)
- 首相官邸「総理の演説・記者会見など」(首相の表明内容の一次情報)
本記事は公表資料と報道に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務処理や投資判断を保証するものではありません。支給単価は毎週改定され、措置の内容も政府の判断で変わります。給油前の最新の単価と価格は公式サイトで、経理処理の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。



