米国401(k)の拠出上限は年368万円|自動加入で参加率94%・iDeCoと何が違うのか

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カテゴリ:制度・ニュース

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シリーズ:世界のユニーク税制・社会保険 #15

米国の会社員の多くは、入社すると「何もしなくても」老後の積立が始まります。職場の年金制度401(k)は、2026年の本人拠出上限が年2万4,500ドル(約368万円)。会社の上乗せ(マッチ拠出)は別枠で、新しく作られるプランには従業員の自動加入が法律で義務化されました。残高10兆ドル・加入7,000万人の巨大制度です。一方の日本のiDeCoは月2.3万円(会社員・企業年金なしの場合)を自分で申し込む設計で、加入者は2026年にようやく400万人。差の核心は金額だけでなく、「入口を自動にするか、手挙げ式にするか」という思想の違いにあります。行動経済学の「ナッジ」が加入率をどう変えたか、そして401(k)の弱点まで、一次情報で整理します。

仕組み:401(k)とは何か——「会社経由の積立」に税優遇と上乗せ

401(k)は、米国の勤務先を通じて加入する確定拠出型の退職貯蓄制度です。名前は根拠条文(内国歳入法401条(k)項)そのもの。仕組みは日本の企業型DC(確定拠出年金)に近く、次の3点セットで動きます。

  1. 給与天引きで拠出する——拠出分はその年の課税所得から除かれる(受取時に課税される「課税の繰延べ」型。拠出時に課税し受取時非課税の「ロス401(k)」を併設するプランも多い)
  2. 会社が上乗せする(マッチ拠出)——「本人が給与の6%まで拠出したら、その半額を会社も拠出」といった形が代表例。本人の上限とは別枠
  3. 本人が運用先を選ぶ——投資信託などから自分で選択。成果もリスクも本人に帰属する

IRS(米国内国歳入庁)が毎年物価に応じて上限を改定しており、2026年は次のとおりです。

2026年の拠出上限(IRS発表)金額円換算の目安
401(k) 本人拠出年2万4,500ドル約368万円
 50歳以上の追加拠出(キャッチアップ)+8,000ドル約120万円
 60〜63歳の特別追加拠出+1万1,250ドル約169万円
IRA(個人退職勘定)年7,500ドル約113万円
  • IRA・ロスIRAの位置づけ:職場の401(k)とは別に、個人で銀行・証券会社に開ける「個人退職勘定」がIRAです。日本のiDeCoの名前の由来にもなりました(iDeCo=個人型DCの愛称)。受取時非課税のロスIRAは人気が高い一方、高所得者は使えません(2026年は単身者で所得15万3,000ドルから枠が縮小し、16万8,000ドル以上でゼロ)
  • 中途引き出しは「できるが罰金つき」:401(k)もIRAも、原則59歳半より前に引き出すと通常の所得課税に加えて10%の追加税がかかります。ただし住宅購入・災害・困窮時の例外や、自分の残高から借りる「401(k)ローン」の仕組みがあり、出口は完全には閉じていません。ここは「原則60歳まで引き出し不可」のiDeCoとの大きな違いです

なぜ生まれたか:偶然の条文と、「人は面倒だと動かない」という発見

401(k)は、周到に設計されて生まれた制度ではありません。1978年の歳入法に加わった条文401条(k)項はもともとボーナスの課税繰延べを想定した小さな規定で、1981年ごろ、福利厚生コンサルタントのテッド・ベンナ氏が「給与天引き+会社の上乗せ」に使えると読み解いて広まった——とされます。折しも米国では、会社が給付額を約束する確定給付型(DB)年金の維持が重荷になっており、運用リスクを従業員に移す確定拠出型への大転換の受け皿になりました。

ただし当初の401(k)は「入りたい人が申し込む」オプトイン式で、入らない人・拠出が少なすぎる人が問題になります。ここで登場したのが行動経済学です。

「加入をデフォルト(初期設定)にすれば、人は入る」——申込書を書かないと入れない設計では多くの人が先送りする。逆に、最初から加入済みにして「嫌なら抜けられる」設計(オプトアウト)にすると、加入率が劇的に上がる。ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏らが広めた、いわゆる「ナッジ(そっと後押しする仕組み)」の代表例です。

  • 2006年の年金保護法が自動加入の採用を後押しし、さらに2022年成立のSECURE 2.0法は、新設される401(k)・403(b)プランに対して自動加入を義務化しました(2025年開始のプラン年度から適用)
  • 義務化の中身は「初期拠出率は給与の3〜10%で自動スタートし、毎年1%ずつ自動で引き上げ、最低10%・最大15%まで」。もちろん従業員はいつでも辞退・変更できます
  • 「自動増額」もセットなのがポイントです。人は一度決めた拠出率を変えないため、昇給に合わせて拠出率も自動で上がる設計にしておく——これも行動経済学の知見(セイラー氏らの「明日はもっと貯めよう」プログラム)が制度に組み込まれたものです

結果:参加率94%と、それでも残る弱点

  • ICI(米国投資信託協会)の統計によると、401(k)の資産残高は10兆ドル(約1,500兆円)、プラン数は約73万、現役の加入者は約7,000万人にのぼります(2025年9月末時点)
  • ナッジの効果は数字にはっきり出ています。大手運用会社バンガードの年次調査(2026年版)によると、自動加入プランの参加率は94%、任意加入(手挙げ式)プランは64%。勤続2年未満の若手に限ると、自動加入の参加率は手挙げ式の2倍超です。自動加入を採用するプランの割合は2006年の10%から61%へ増え、本人と会社を合わせた平均拠出率は給与の12.1%と過去最高になりました

ただし、401(k)は「優れた制度」と言い切れるものではありません。弱点も構造的です。

  • 運用リスクは全部自己責任:将来の受取額は市場次第で、確定給付型のような保証はありません。2008年の金融危機では退職直前の世代の残高が急減し、社会問題になりました
  • 手数料の格差:運営コストの多くは加入者負担で、プランによって差が大きく、手数料をめぐる集団訴訟も相次いでいます
  • そもそも職場にプランがない人が3割:米労働省労働統計局の調査では、民間労働者のうち職場の退職給付制度を利用できる人は72%(2025年3月)。従業員100人未満の事業所では59%に下がります。自動加入は「プランがある職場」でしか働きません
  • 税優遇は高所得者ほど大きい:拠出時の所得控除型なので、税率の高い人ほど恩恵が大きく、低所得層に届きにくいという批判があります

日本との比較:入口は手挙げ式・出口は固く閉じる

日本の対応物は、会社が導入する企業型DC(加入者862万人・2025年3月末)と、個人で入るiDeCo(2026年6月に加入者400万人到達)です。iDeCoは401(k)の個人版であるIRAに範を取った制度ですが、設計思想はかなり違います。

米国 401(k)日本 iDeCo
本人の拠出上限年2万4,500ドル(約368万円)+50歳以上は追加枠(2026年)月2.0万〜6.8万円(年24万〜81.6万円・働き方の区分による)
会社の上乗せマッチ拠出が広く普及(本人枠とは別)iDeCo本体にはなし(企業型DCのマッチング拠出は別制度)
入口新設プランは自動加入が義務(辞退は自由)自分で金融機関を選んで申し込む(手挙げ式)
中途引き出し可能。ただし59歳半前は原則10%追加税+所得課税。ローン制度あり原則60歳まで不可
受取時の課税原則すべて所得として課税(ロス型は非課税)一時金は退職所得控除・年金受取は公的年金等控除で軽減
運用リスク本人が負う本人が負う

対照的なのは入口と出口です。米国は「入口は自動で入れて、出口は罰金つきで開けておく」。日本は「入口は本人の意思に委ね、出口は60歳まで固く閉じる」。iDeCoの加入者がなかなか増えなかった理由としては、①手挙げ式で手続きが多い(かつて必要だった勤務先の証明書は2024年12月にようやく廃止)、②口座に毎月手数料がかかる(最低でも月171円程度)、③60歳まで引き出せない資金拘束への不安——が挙げられます。逆に言えば、60歳まで引き出せないからこそ老後資金が確実に残るという見方もでき、どちらの設計が正しいと単純には言えません。

そして日本側も、いま大きく動いています。2026年4月には企業型DCのマッチング拠出の「会社掛金と同額まで」という制限が撤廃され、2026年12月からはiDeCoの加入可能年齢が70歳未満に延び、掛金上限も自営業者は月7.5万円、会社員・公務員は月6.2万円の共通枠へと大幅に拡大します(引き上げ後の掛金は2027年1月拠出分から)。詳しくはiDeCoの2026年12月改正で整理しています。iDeCoの節税の基本はiDeCoの節税効果と申告手順、自分の場合の節税額はiDeCo節税シミュレーターで試算できます。

日本人に関係するケース:米駐在の401(k)と、国内でできること

米国駐在・勤務で401(k)に入った人が帰国するとき、口座の扱いは意外な落とし穴になります。

  • 残高はそのまま置いておけるのが原則:多くのプランでは帰国後も口座を維持できます。まずは残高・ログイン情報・住所変更の手続きを確認し、放置口座にしないことが第一歩です
  • 安易な解約は高くつく:59歳半前に引き出すと米国側で原則10%の追加税+源泉徴収がかかるうえ、日本の居住者になってからの受取は日本側でも課税関係が生じ、日米租税条約や受取方法によって扱いが変わる複雑な論点です。金額が大きい場合は、国際税務に詳しい税理士・専門家に相談してから動くことを強くおすすめします
  • 退職金やiDeCoと受取時期が重なる人は、日本側の退職所得控除の調整(いわゆる10年ルール)にも影響し得ます。考え方はiDeCoと退職金の受け取り順番が参考になります

米国に縁がない人にとっても、この記事の結論はシンプルです。日本の制度は「自動では始まらない」ので、自分で入口をくぐるしかありません。幸い、掛金の所得控除というiDeCoの税優遇は401(k)と同じ仕組みで、非課税運用のNISAと組み合わせれば「入口の税優遇+出口の非課税」を自分で設計できます。使い分けはiDeCoとNISAどっち新NISA活用ガイドで解説しています。

今日やること

今日やること

  1. 勤務先に企業型DCがあるか、マッチング拠出ができるかを総務・人事に確認する(2026年4月から「会社掛金と同額まで」の制限は撤廃済み)
  2. iDeCoの現在の掛金と自分の上限を確認し、節税シミュレーターで増額した場合の節税額を試算する(上限は2027年1月拠出分から拡大)
  3. 米国勤務の経験がある人は、401(k)・IRA口座の残高と連絡先住所を確認し、口座情報を家族と共有できる形でメモに残す

よくある質問

Q. 401(k)には年いくらまで拠出できますか?

A. IRSの発表によると、2026年の本人拠出上限は年2万4,500ドル(約368万円)です。50歳以上は8,000ドル、60〜63歳は1万1,250ドルの追加拠出枠があります。会社のマッチ拠出はこの本人枠とは別に上乗せされます。

Q. 日本に住んでいても401(k)やIRAに入れますか?

A. 原則入れません。401(k)は米国の勤務先のプランを通じて加入するもので、IRAも米国の課税対象となる勤労所得があることが前提です。日本の居住者が使える同種の税優遇制度はiDeCo(個人型確定拠出年金)とNISAです。

Q. 自動加入にすると、なぜ加入率が上がるのですか?

A. 「申し込まないと入れない」設計では多くの人が手続きを先送りするためです。最初から加入済みにして辞退を自由にする(オプトアウト)と、バンガードの調査では参加率94%と、手挙げ式プランの64%を大きく上回りました。行動経済学でナッジと呼ばれる手法の代表例で、米国では2025年から新設プランへの自動加入が義務化されています。

Q. 米国駐在中に作った401(k)は、帰国したらどうすべきですか?

A. 多くのプランでは帰国後もそのまま維持できます。59歳半前に引き出すと米国で原則10%の追加税がかかるうえ、日本の居住者としての課税関係も生じ、受取方法や日米租税条約によって扱いが変わります。安易に解約せず、国際税務に詳しい税理士・専門家に相談してから判断してください。

参考リンク(出典)

※ 数値は2026年8月時点の公表資料にもとづきます。ドルの円換算は1ドル=150円の概算です。米国の制度は米国の税制上の居住者・勤務者に適用されるもので、日本の居住者は原則加入できません。本記事は制度比較の一般的な情報提供であり、個別の判断(特に401(k)の引き出し・国際税務)は税務署・税理士・専門家にご相談ください。

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公開日:2026年08月26日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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