生涯で払う税金と社会保険料1億円|会社員・個人事業主・法人を4象限で比較

カテゴリ:制度・ニュース

『金持ち父さん 貧乏父さん』とその続編『キャッシュフロー・クワドラント』が広めた考え方に、「従業員は稼いでから税を引かれ、残りで生活する。ビジネスオーナーは稼いだお金を使ってから、残りに税がかかる」というものがあります。順番が違うから資産の増え方が違う、という主張です。では日本の制度で、これはどこまで本当なのか。会社員・個人事業主・一人法人の3つで、同じ600万円の稼ぎに対して税と社会保険料がいくら乗るのかを、2026年の実際の税率・保険料率で計算しました。結論を先に書くと、日本で効いているのは所得税ではなく社会保険料で、そして「負担率がいちばん低い人」の手取りがいちばん少ないという、直感に反する結果になります。

まず前提:国民負担率45.7%は「あなたの負担率」ではない

この話をするとき、必ず引き合いに出されるのが国民負担率です。財務省は2026年3月5日、令和8年度の国民負担率を45.7%(租税負担率28.0%+社会保障負担率17.6%)と公表しました。財政赤字を加えた潜在的国民負担率は48.4%です。

この45.7%を自分の手取りに当てはめてはいけない

国民負担率は「国民所得に対する、国民全体が納める税と社会保険料の合計の割合」です。分子には法人税・相続税・固定資産税・消費税など個人の給与明細に出てこないものが全部入り、分母は国民所得(GDPではない)。個人一人ひとりの負担率とは計算式そのものが違います。「手取りが5割強しかない」という話とは別物なので、混同しないでください。国際比較の意味と読み方は国民負担率の国際比較にまとめています。

個人の負担を知りたいなら、自分の立場で積み上げて計算するしかありません。以下はその計算です。

比べ方をそろえる——「600万円を生み出したら、いくら残るか」

会社員の年収600万円と、個人事業主の所得600万円と、法人の粗利600万円は、同じ600万円ではありません。会社員の額面600万円の裏には、会社が別に負担している社会保険料が乗っているからです。そこで本記事では、比較の出発点を全部そろえます。

共通の前提

「1年間に600万円の価値を生み出した」ところからスタートします。会社員なら会社が用意した人件費予算が600万円、個人事業主なら売上から経費を引いた利益が600万円、法人なら役員報酬を払う前の粗利が600万円。ここから税と社会保険料を引いて、最後に個人の手元にいくら残るかを見ます。

条件:東京都(23区)/40歳未満(介護保険料なし)/単身・扶養親族なし/協会けんぽ/個人事業主は青色申告65万円控除・第1種事業/法人は資本金1,000万円以下・従業員なし/2026年の税率・保険料率。復興特別所得税を含み、ふるさと納税や生命保険料控除などは使わない前提です。

3つの立場で計算した結果

項目会社員個人事業主一人法人A
役員報酬を最大化
一人法人B
役員報酬180万円
生み出した価値600万円600万円600万円600万円
受け取る形額面520.3万円事業所得600万円役員報酬518.1万円役員報酬180万円
社会保険料(本人)76.0万円80.3万円
国民年金21.5+国保58.8
73.1万円25.4万円
社会保険料(会社)79.7万円74.9万円26.0万円
所得税9.8万円32.4万円9.9万円0円
住民税25.8万円40.1万円25.9万円4.3万円
個人事業税15.5万円
法人税等7.0万円
均等割のみ
93.7万円
負担の合計191.3万円168.3万円190.8万円149.4万円
600万円に対する率31.9%28.0%31.8%24.9%
個人の手取り408.7万円431.7万円409.2万円150.3万円
法人に残る(税引後)0円300.3万円

会社員|負担191.3万円(31.9%)

本人社保76.0会社社保79.7住民25.8手取り408.7万円

個人事業主|負担168.3万円(28.0%)

国保・年金80.3所得32.4住民40.1手取り431.7万円

灰色は個人事業税15.5万円

一人法人A(役員報酬を最大化)|負担190.8万円(31.8%)

本人社保73.1会社社保74.9住民25.9手取り409.2万円

灰色は法人住民税の均等割7万円

一人法人B(役員報酬180万円)|負担149.4万円(24.9%)

法人税等93.7手取り150.3法人に残る300.3万円

本人の社会保険料会社が払う社会保険料所得税住民税事業税・法人税等個人の手取り

この表からいちばん先に読み取ってほしいこと

一人法人Aの負担190.8万円は、会社員の191.3万円とほぼ同じです。役員報酬に全額を回す限り、法人は税制上ほとんど有利になりません。役員も給与所得者なので、会社員とまったく同じ計算をたどるからです。それどころか、赤字でも必ずかかる法人住民税の均等割7万円と、決算・申告の手間が上乗せされます。「法人にすれば税が減る」という話は、報酬を下げて法人にお金を残す設計とセットでなければ成立しません

負担率がいちばん低い人の手取りが、いちばん少ない

もう一度、表の下2行を見比べてください。

負担率と手取りは連動しない
  • 一人法人B(役員報酬180万円):負担率24.9%で最小。しかし個人の手取りは150.3万円で最小
  • 個人事業主:負担率28.0%。個人の手取りは431.7万円で最大
  • 会社員:負担率31.9%。手取り408.7万円

一人法人Bで残った300.3万円は法人のお金であって、あなたのお金ではありません。生活費として使うには、翌期の役員報酬を上げるか、配当を出すか、退職金として受け取るかのいずれかで、そのときにあらためて課税されます。役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に決めたら期中に変更できないため、「今月は生活費が足りないから多めに」ということもできません。

「税率が低い」と「豊かに暮らせる」は別

『キャッシュフロー・クワドラント』が描くBクワドラントの節税は、稼いだお金を法人に置いたままにできる人にだけ効きます。稼ぎのほとんどを生活費に使う人が同じ形をとると、負担率は下がっても手元の現金は激減します。この設計が機能するのは、①別に生活費の原資がある ②法人の資金を事業の再投資に回す ③長期的に退職金として受け取る、といった条件が揃うときです。マイクロ法人の具体的な損得はマイクロ法人と社会保険料で詳しく扱っています。

4つの象限を、日本の制度で採点する

『キャッシュフロー・クワドラント』は、お金の稼ぎ方をE(従業員)・S(自営業者)・B(ビジネスオーナー)・I(投資家)の4つに分け、右側(B・I)ほど税制上有利だと説きます。日本の制度に当てはめると、当たっている部分と当たっていない部分がはっきり分かれます。

E

従業員

源泉徴収で先に引かれ、残りで生活する。この「順番」の指摘は事実。ただし日本には給与所得控除があり、年収520万円なら148万円が自動的に経費とみなされて引かれます。実額の経費で使う制度(特定支出控除)もありますが、給与所得控除の半分を超える部分しか対象にならず、実際に使える人はごく限られます。

S

自営業者

売上から実額の経費を引いた残りに課税されるので、「使ってから課税」は成立します。今回の試算で手取りが最大になったのもここ。ただし社会保険は国民年金と国民健康保険で、会社が半分を持つ仕組みがない代わりに、給付も薄い。加えて個人事業税が別にかかります。

B

ビジネスオーナー

役員報酬で給与所得控除を使いながら、残りを法人に置ける。この二段構えは実在します。ただし報酬に回した分は会社員とまったく同じ扱いで、法人に残した分は自由に使えません。均等割7万円・社会保険の強制加入・税理士費用という固定費もつきます。

I

投資家

上場株式の配当・譲渡益は申告分離課税で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)。ここが日本で最大の非対称で、後述します。ただし2026年からは、極めて高い水準の所得への負担適正化措置が強化されています。

本の主張日本での評価理由
従業員は「稼ぐ→納税→使う」、事業者は「稼ぐ→使う→納税」おおむね正しい源泉徴収と、必要経費の実額控除という制度の差は実在する
だから従業員は経費を1円も引けない正しくない給与所得控除が概算経費として働く。年収520万円で148万円。これを実額の経費で上回るのは容易ではない
法人をつくれば税負担が大きく下がる条件つき役員報酬に全額回すなら会社員とほぼ同じ(本記事の試算で191.3万円 対 190.8万円)。報酬を抑えて法人に残す場合だけ下がる
税制は右側(B・I)に有利に設計されている半分正しい所得税の税率表は立場で変わらない。差がつくのは主に社会保険料と、金融所得の分離課税

日本で本当に効いているのは、税ではなく社会保険料

先ほどの表から、所得税と住民税の合計だけを取り出してみます。会社員35.6万円、個人事業主72.5万円、一人法人A 35.8万円。税だけを見ると、個人事業主がいちばん重いのです。給与所得控除148万円に対して青色申告特別控除は65万円しかないので、同じ稼ぎでも課税所得が大きくなるためです。

ところが社会保険料は、会社負担を含めると会社員155.7万円、個人事業主80.3万円、一人法人B 51.4万円。税で37万円の不利を負っている個人事業主が、社会保険料で75万円を取り返して逆転する——これが「個人事業主の手取りが最大になった」ことの中身です。立場による差を作っているのは、税ではなく社会保険料のほうでした。

立場年金医療保険負担の決まり方
会社員・法人役員厚生年金 18.3%
(労使折半で本人9.15%)
協会けんぽ 全国平均9.90%
(労使折半で本人4.95%)
報酬に比例(標準報酬月額65万円で頭打ち)
個人事業主国民年金 月17,920円
(所得にかかわらず定額)
国民健康保険
(東京23区は医療分7.51%+支援金分2.80%ほか)
年金は定額、国保は所得比例だが年110万円で頭打ち

ここに構造がはっきり出ています。厚生年金は上限に当たるまで報酬の18.3%が容赦なく乗るのに対し、国民年金は所得がいくらであろうと月17,920円の定額です。所得600万円なら国民年金の実質負担率は3.6%。この差が、個人事業主の手取りが最大になった主な理由です。

投資家(I)だけが持つ非対称

給与にも事業所得にも社会保険料が乗りますが、上場株式の譲渡益・配当を特定口座(源泉徴収あり)で申告不要にした場合、その所得は国民健康保険料の算定に入りません。同じ100万円の利益でも、事業で稼げば国保料の対象になり、株で稼げば対象外になる。これは日本の制度における最大級の非対称で、キヨサキ氏の本には出てこない日本固有の論点です。

ただし注意が2つ。確定申告をして総合課税や損益通算・繰越控除を選ぶと、その所得は国保料の算定に入ります(有利なはずの申告が保険料を押し上げることがある)。もう一つ、金融所得を保険料算定に含める方向での議論は続いており、恒久的に安全な設計とは言えません。分離課税の仕組みは株とNISAの確定申告で確認してください。

負担が軽い=得、ではない——給付で逆転する

ここが本記事でいちばん強調したいところです。社会保険料は税ではなく、払った分だけ給付が返ってくる仕組みです。個人事業主の負担が軽いのは、受け取る保障が薄いことの裏返しでしかありません。

もらえるもの会社員・法人役員個人事業主
老後の年金老齢基礎年金+老齢厚生年金。厚生労働省の標準モデル(平均標準報酬45.5万円で40年)では、厚生年金の上乗せ分だけで月約9.6万円老齢基礎年金のみ。満額でも月70,608円(2026年度)
病気・けがで働けないとき傷病手当金(標準報酬日額の3分の2を最長1年6か月)原則なし
出産で休むとき出産手当金原則なし
仕事中のけが労災保険(保険料は全額会社負担)原則なし(特別加入は任意・自己負担)
失業したとき雇用保険の基本手当なし
遺族への保障遺族基礎年金+遺族厚生年金遺族基礎年金のみ(子のある配偶者等)
生涯で見ると、差は逆転しうる

今回の試算で、会社員と個人事業主の年間負担差は23.0万円(191.3万円−168.3万円)。38年間(22〜60歳)続けば約870万円の差です。

一方、厚生年金の上乗せ分は標準モデルで月約9.6万円。65歳から25年受け取れば約2,880万円になります。負担の差870万円に対して、給付の差はその3倍以上。もちろん報酬水準や受給期間で結果は変わりますが、「保険料が安いほうが得」と単純に言えないことは、この2つの数字だけでもわかります。

この点は国民年金は払い損かでも数字を追っています。個人事業主が老後の差を埋める手段としては、iDeCo(自営業者は月68,000円まで)、国民年金基金、小規模企業共済、付加年金といった制度があり、いずれも掛金が所得控除になります。ただしこれらは自分で選んで、自分で払うものです。会社員が意識せずに厚生年金へ積み立てているのと違い、やらなければ何も起きません。

生涯ではいくら払うのか

ここまでの年間モデルを、働く期間全体に伸ばしてみます。労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2025」によると、大学卒業後に60歳まで働き続けた場合の生涯賃金は男性で3億4,000万円、女性で2億7,000万円(退職金を含まず、転職や無職期間がない前提)。企業規模別では、大卒男性で従業員1,000人以上なら3億8,000万円、10〜99人なら2億8,000万円と大きく開きます。

生涯賃金3億4,000万円の大卒男性の場合(概算)
  • 税と社会保険料(本人負担+会社負担):本記事のモデルの負担率およそ32%を当てはめると 1億1,000万円前後
  • そのうち給与明細から実際に消えるのは、ざっくり7,000万〜8,000万円(残りは会社が払う分)
  • 手取りを使うときの消費税:手取り約2億3,000万円の大半を消費に回し、軽減税率を考慮して平均9%とすると 1,700万円前後
  • 合計でおよそ1億2,000万〜1億3,000万円

高年収帯では社会保険料に上限があるため率が下がり、逆に所得税は累進で上がります。年齢による年収カーブも無視しているため、あくまで桁を掴むための概算です。

同じ38年を、今回の年間モデル(毎年600万円の価値を生み出す)で単純に伸ばすと次のようになります。

立場38年間の負担合計会社員との差
会社員約7,300万円
個人事業主約6,400万円約870万円 少ない
一人法人A(役員報酬を最大化)約7,300万円ほぼ同じ
一人法人B(役員報酬180万円)約5,700万円約1,600万円 少ない

ただし前の章のとおり、個人事業主の870万円は年金給付の差で相殺されますし、一人法人Bの1,600万円は法人に積み上がったお金を最後にどう取り出すかで結果が変わります。差額をそのまま「得した金額」と読むことはできません。

象限を移るときにかかる、見えにくいコスト

『キャッシュフロー・クワドラント』は左から右へ移ることを勧めますが、日本で実際に移ろうとすると、税額表には出てこない固定費が発生します。

コスト目安中身
法人設立費用合同会社で約6万円〜/株式会社で約20万円〜登録免許税・定款認証など(会社設立の費用
法人住民税の均等割年7万円資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合。赤字でも必ずかかる
社会保険の強制加入報酬の約28.6%(労使合計)役員1人でも加入義務。個人事業主のときより負担が増える場合がある
税理士費用年20万〜50万円程度法人決算・申告は個人の確定申告より複雑になる
役員報酬の硬直性事業年度開始から3か月以内に決め、期中は原則変更できない

今回の試算で一人法人Aの負担が会社員とほぼ同じだったことを思い出してください。そこにこれらの固定費が乗ります。「法人化すれば節税」という話に飛びつく前に、自分の所得水準でその差が固定費を上回るかを確かめてください。分岐点の考え方は法人化のタイミングにまとめています。

法人の本当の利点は、税以外にあることが多い

有限責任、決算期を自由に決められる、欠損金を10年繰り越せる、取引先の与信・契約要件を満たせる、事業を第三者に引き継ぎやすい——実務で法人化が効くのはこちら側です。税と社会保険料だけで判断すると、判断を誤りやすくなります。

この考え方が向かない人

稼ぎのほとんどを生活費に使う人

役員報酬を抑えて法人に残す設計は、手元の現金が激減します。住宅ローンの審査でも役員報酬の額面が見られるため、報酬を下げると借入額が伸びません。

収入が安定しない人

役員報酬は期中に変更できず、業績が落ちても払い続ける必要があります。払えなくなって未払計上を重ねると、税務上の論点になります。

健康リスクや扶養家族が大きい人

傷病手当金・出産手当金・労災・遺族厚生年金がない状態は、家計の一本足打法になります。保険料の節約分を民間保険で埋めると、結局同じか高くつくこともあります。

逆に、検討する価値がある人

所得が安定して高く、生活費と事業資金を分けられ、事業に再投資する予定がある人。あるいは取引先から法人格を求められている人。この場合は税だけでなく資金繰りと信用の面で意味があります。

今日やること

  1. 直近の給与明細か確定申告書を1枚出して、社会保険料の欄だけ足してみる。会社員なら健康保険・厚生年金・雇用保険の3行、個人事業主なら国民年金と国民健康保険。所得税・住民税より大きい人が大半のはずです。どこが効いているかを自分の数字で確かめるのが出発点です。
  2. 会社員は「賞与を含む年収 × 15%」を計算して、会社が別に払っている額を把握する。この金額は源泉徴収票に出てきませんが、あなたを雇うために会社が用意している人件費の一部です。転職や独立の条件を比べるときの基準になります。
  3. 個人事業主は、老後の上乗せを1つ決める。iDeCo(自営業者は月68,000円まで)・国民年金基金・小規模企業共済・付加年金のいずれも掛金が所得控除になります。今回の試算で浮いた分をここに回すかどうかが、生涯の差を決めます。

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よくある質問

Q. 結局、会社員・個人事業主・法人のどれがいちばん得ですか。

A. 「得」の定義によって答えが変わります。同じ600万円の価値に対する負担率がいちばん低いのは役員報酬を抑えた一人法人(24.9%)ですが、個人の手取りは150.3万円で最少です。個人の手取りがいちばん多いのは個人事業主(431.7万円)ですが、老後の年金と、傷病手当金・労災・雇用保険といった保障が薄くなります。会社員は負担率が高い代わりに保障が厚く、手続きの手間もほぼありません。一つの指標だけで比べないでください。

Q. 法人をつくれば税金が減るというのは本当ですか。

A. 役員報酬に利益を全額回す場合は、ほとんど減りません。本記事の試算では会社員の負担191.3万円に対し、一人法人で役員報酬を最大化した場合が190.8万円でした。役員も給与所得者なので同じ計算をたどるためです。負担が下がるのは役員報酬を抑えて法人に利益を残す設計をとったときですが、その場合は法人に残ったお金を個人が自由に使えません。加えて法人住民税の均等割が赤字でも年7万円、税理士費用が年20万〜50万円程度かかります。

Q. 会社が払っている社会保険料も自分の負担と考えるべきですか。

A. 法律上の負担者は事業主なので、あなたの給与明細には出てきません。ただし会社は「人件費の総額」で採用を判断するため、経済学ではその一部が賃金の押し下げという形で労働者に転嫁されると考えられています。本記事では両方の見方ができるよう、本人負担と会社負担を分けて表示しています。転職や独立の条件を比べるときは、額面ではなく人件費の総額で見ると判断を誤りにくくなります。

Q. 個人事業主は社会保険料が安いのに、なぜみんな法人にしないのですか。

A. 安いのは給付が薄いことの裏返しだからです。国民年金は満額でも月70,608円(2026年度)で、厚生年金の上乗せがありません。傷病手当金・出産手当金・雇用保険の基本手当・労災保険も原則ありません。厚生労働省の標準モデルでは厚生年金の上乗せ分だけで月約9.6万円あり、25年受け取れば約2,880万円になります。保険料の差だけを見て判断すると、この給付の差を見落とします。

Q. 給与所得控除があるなら、会社員も経費が引けているということですか。

A. そのとおりです。年収520万円なら給与所得控除は148万円で、これは領収書なしで自動的に引かれます。実額で経費を引く特定支出控除という制度もありますが、給与所得控除の2分の1を超える部分しか対象にならないため、この例なら年74万円を超える自己負担がないと1円も使えません。「会社員は経費を引けない」というのは、日本の制度では正確ではありません。

Q. 国民負担率45.7%は、私の手取りが54.3%しかないという意味ですか。

A. 違います。国民負担率は国民所得に対する国民全体の税・社会保険料の割合で、分子には法人税・相続税・固定資産税なども含まれます。個人一人の負担率とは計算式が別物です。本記事の試算では、600万円の価値に対する負担は会社員で31.9%、個人事業主で28.0%でした。マクロの指標を自分の家計にそのまま当てはめないでください。

参考リンク(出典)

税率・保険料率・年金額は公的機関の2026年(令和8年度)公表資料で確認しています。試算は前提を明記した概算であり、家族構成・居住自治体・業種・報酬の支給形態によって金額は変わります。個別の判断は税務署・年金事務所・税理士・社会保険労務士にご相談ください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の働き方・法人形態・書籍・商品を推奨するものではありません。書籍の内容の紹介は制度を検証するための引用であり、その主張の当否を評価するものではありません。

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公開日:2026年08月17日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項