青色申告特別控除が最大75万円に|令和9年分から紙の申告は10万円

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カテゴリ:制度・ニュース

最終更新:2026年8月20日/本記事は財務省「令和8年度税制改正の大綱」および国税庁が2026年(令和8年)4月・8月に公表したリーフレットを確認して作成しています。根拠となる改正法は2026年3月31日に成立・公布済みです。適用は令和9年分の所得税からで、実務の細目は今後の国税庁の案内で追加される可能性があります。

先に結論から。青色申告特別控除は令和9年分(2027年分)から75万円・65万円・10万円の3段階になります。増額の話ばかりが取り上げられますが、実際に影響が大きいのは下がる側です。①紙で申告する人の上限は10万円になります(今は書面でも55万円)。②簡易簿記で前々年の収入金額が1,000万円を超える人は控除がゼロになります。③75万円を取るには、複式簿記とe-Taxに加えて届出書の提出が要ります。準備できる年は令和8年分と令和9年分の2回だけです。

何が変わるのか

令和8年度税制改正で、青色申告特別控除の区分が組み替えられました。財務省の大綱では3つの見直しとして書かれていますが、結果だけ見ると「金額が1段階ずつ上にずれて、代わりに要件が電子化前提になった」という形です。

今(令和8年分まで)要件令和9年分から要件
65万円複式簿記+(e-Tax申告 または 優良な電子帳簿の保存)75万円複式簿記+e-Tax申告+(優良な電子帳簿の保存 または デジタルシームレス保存)+届出書
55万円複式簿記(申告方法は問わない)65万円複式簿記+e-Tax申告が必須
10万円上記以外の青色申告者10万円上記以外。ただし簡易簿記で前々年の収入金額が1,000万円超の人は対象外(0円)

いちばん大きな構造変化は、「e-Tax」と「優良な電子帳簿」が並列の選択肢ではなくなったことです。今はどちらか一方を満たせば65万円が取れますが、令和9年分からはe-Taxが土台の必須要件になり、電子帳簿はその上に積む追加要件になります。

適用は令和9年分(2027年1月〜12月)の所得税から。実際に申告書へ書くのは2028年の確定申告です。個人住民税にはその翌年度(令和10年度分)から反映されます。青色申告と白色申告の現行ルール全体は青色申告と白色申告の違いで整理しています。

落とし穴その1:紙で出す人は55万円が10万円になる

報道では「最大75万円に増額」という見出しが目立ちますが、国税庁のリーフレットははっきりこう書いています。

「令和8年分の確定申告までは、書面申告でも55万円の青色申告特別控除が適用可能でしたが、令和9年分以降は、書面申告の場合の控除上限額は10万円となります」(国税庁「優良な電子帳簿の保存又はデジタルシームレス保存により75万円の青色申告特別控除を適用しましょう!」令和8年8月)

複式簿記できちんと帳簿をつけていても、提出が紙なら10万円です。つまり45万円の減額。同じ帳簿、同じ手間で控除だけが減ります。

影響を受けない人

すでに複式簿記+e-Taxで65万円を取っている人。令和9年分も自動的に65万円が続きます。電子帳簿の要件と届出書を足せば75万円に上がります。

静かに損をする人

複式簿記だけど郵送・持参で申告している人(55万円→10万円)。また、優良な電子帳簿の届出だけで65万円を取っていて申告は紙、という人は65万円→10万円と最大の下げ幅になります。

この改正で「何もしていないのに控除が増える人」はいません。増えるのは電子帳簿という新しい手間を引き受けた人だけで、動かなければ据え置きか減額です。個人事業主の税金の全体像とあわせて、自分がどの段に立っているかを確認しておいてください。

落とし穴その2:簡易簿記で収入1,000万円超なら控除ゼロ

もうひとつが10万円控除の対象縮小です。国税庁は令和8年4月のリーフレットで、次の表を示しています。

前々年の収入金額改正前(簡易簿記)改正後(簡易簿記)改正後(複式簿記+e-Tax)
1,000万円超10万円0円(控除対象外)65万円または75万円
1,000万円以下10万円10万円65万円または75万円

判定に使うのは所得ではなく収入金額(売上)で、しかも前々年分です。つまり令和9年分の控除は、令和7年(2025年)の売上で決まります。すでに確定している過去の数字で判定されるので、今から売上を調整して逃れるということはできません。

前々年で判定するのは、消費税の基準期間と同じ考え方です。インボイス登録の判定で「2年前の売上1,000万円」を意識してきた人にとっては、同じ年・同じ金額をもう一度見ることになります。インボイスの2割特例の終了と重なる時期でもあるので、売上1,000万円前後の事業者は影響が二重に来ます。

不動産所得には例外があります。国税庁の注記によると、収入1,000万円超で控除対象外になるのは事業的規模(いわゆる5棟10室基準)の人だけです。業務的規模にとどまる場合は、改正後も従来どおり最大10万円の控除を受けられます。ただしその場合、複式簿記に移行しても控除額は10万円のままで増えません。

事業所得と不動産所得は別々に判定します。事業所得の収入が1,000万円を超えていても、不動産所得の収入が1,000万円以下なら、不動産所得側の判定はセーフです。

75万円を取る2つのルート

75万円は、改正後の65万円の要件(複式簿記+e-Tax)を満たしたうえで、次の①か②のどちらかを追加で満たすと適用されます。どちらの場合も確定申告期限までに届出書の提出が必要です。

ルート① 優良な電子帳簿の保存

その年分の事業に係る仕訳帳と総勘定元帳について、課税期間の最初から優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで備え付け・保存します。優良な電子帳簿とは、システムの説明書やモニター等の備付けといった基本の保存要件に加えて、次の3つをすべて満たす電子帳簿のことです。

  • 訂正・削除・追加等の履歴が残ること:あとから自由に書き換えられない仕組みであること。
  • 帳簿間で相互関連性があること:仕訳帳から総勘定元帳へ、数字をたどって突き合わせられること。
  • 検索機能があること:取引等の日付・金額・相手方で検索できること。

提出する届出書は「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る75万円の青色申告特別控除・過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」です。国税庁によると、この届出書の名称は令和9年3月頃に「65万」から「75万」へ変更される予定です。すでに優良な電子帳簿の保存で65万円控除を受けている人は、改めて提出する必要はありません。

ルート② デジタルシームレス保存

こちらが今回の新顔です。電子取引データを、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使って一定の要件で送受信・保存し、税務職員から求められたときに確認できるようにしておく方法です。

基準に適合するシステムとは、次のどちらかの電子取引データを、後述の要件に従って保存できるシステムを指します。

  • デジタル庁が管理する仕様に従ったデジタルインボイス
  • 預貯金口座における決済データ

満たすべき一定の要件は3つです。

  • 改ざん防止の確保:データの送受信と保存を、訂正削除履歴が残るシステム、または訂正削除ができないシステムで行うこと。
  • 記帳の適正性確保:電子取引データの金額を訂正削除したうえで電子帳簿に記録することができないこと、または訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと。
  • 電子帳簿との関連性確保:電子取引データと電子帳簿の関連性を相互に確認できるようにしておくこと。

届出書は「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」です。要件を満たすソフトかどうかは、国税庁が案内しているJIIMA認証情報リストで確認できます。

ルート①は「自分の帳簿の作り方」の話、ルート②は「取引データの受け渡し方」の話です。会計ソフトを使っていて銀行口座と自動連携している人はルート②の素地がありますが、いずれもソフトが対応していることが前提になります。手作業の表計算ソフトでは、どちらの要件も満たせません。

手取りはいくら変わるのか

青色申告特別控除は所得そのものを圧縮するため、所得税・住民税だけでなく国民健康保険料にも効きます(一方で個人事業税には反映されません)。効き方が二重・三重になるぶん、増減のインパクトは控除額の見た目より大きくなります。

所得税率10%の層(課税所得195万円超330万円以下)で、住民税10%・国保の所得割11%(東京23区の水準)を当てはめた概算が次のとおりです。

変化控除額の差年間の負担の目安
65万円 → 75万円(電子帳簿を足した)+10万円約3.1万円 軽くなる
55万円 → 10万円(紙のまま据え置いた)−45万円約14.0万円 重くなる
65万円 → 10万円(電子帳簿はあるが紙申告)−55万円約17.2万円 重くなる
10万円 → 0円(簡易簿記・前々年の収入1,000万円超)−10万円約3.1万円 重くなる

計算例:55万円 → 10万円のケース
控除の減少 45万円 ×(所得税10.21% + 住民税10% + 国保11%)= 45万円 × 31.21% = 約140,445円

所得税率には復興特別所得税2.1%を織り込んでいます。国保の料率は自治体で異なり、賦課限度額(令和7年度は年109万円)に達している場合は国保分の増減は生じません。あくまで目安として、ご自身の数字は計算ツール(詳細版)で試算してください。

紙で申告している人にとっては、e-Taxに切り替えるだけで年10万円以上の差になり得るということです。国保への波及まで含めると、青色申告特別控除は個人事業主にとって最も費用対効果の高い節税枠のひとつであり続けます。国保の計算のしくみは国民健康保険料の計算で解説しています。

令和9年分に向けた準備の順番

猶予は令和8年分と令和9年分の2回の申告です。優良な電子帳簿は「課税期間の最初から」要件を満たしている必要があるため、令和9年分を狙うなら2027年1月1日の時点で体制ができていることが条件になります。年末に慌てて始めても間に合いません。

  • まず自分の現在地を確認する:今の控除額が65万円・55万円・10万円のどれか、そして申告方法がe-Taxか紙かを確認します。前々年(令和7年)の収入金額が1,000万円を超えているかも見ておきます。
  • 紙で出しているならe-Taxへ移行する:これが最優先です。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から、確定申告書と青色申告決算書(貸借対照表を含む)のデータを作成して送信できます。マイナンバーカードがあればスマートフォンからも可能です。
  • 会計ソフトが優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存に対応しているか調べる:JIIMA認証情報リストが確認の入口になります。未対応なら乗り換えを検討する時間が要ります。
  • 令和9年1月1日から要件を満たして記帳を始める:期中からの切り替えでは、その年分の75万円は取れません。
  • 令和9年分の確定申告期限(2028年3月15日)までに届出書を出す:ルート①とルート②で提出する届出書が違います。すでに優良な電子帳簿で65万円控除を受けている人は再提出不要です。

会計ソフトの導入費用にはデジタル化・AI導入補助金が使えます。国税庁のリーフレットも案内しており、小規模事業者の場合は導入費用の最大80%が補助されます。制度の詳細と公募期間は中小企業庁・中小機構の案内で確認してください。ソフトを乗り換えるなら、補助金の公募回に合わせるとコストを抑えられます。

今日やること

  1. 去年の確定申告書の控えを開き、青色申告特別控除の欄が「65万円・55万円・10万円」のどれになっているかを確認する。
  2. 紙で提出していたなら、マイナンバーカードとスマートフォンでe-Taxが使えるかを確かめる(次の申告から65万円の土台ができる)。
  3. 令和7年(2025年)の売上が1,000万円を超えていたかを帳簿で確認する。超えていて簡易簿記なら、複式簿記への移行を今年のうちに始める。

手取りを増やす打ち手の一覧は手取りアップ・アクションリストにまとめています。

よくある質問

75万円の控除はいつの申告から使えますか。

令和9年分(2027年1月〜12月)の所得税からです。実際に申告書を出すのは2028年の確定申告になります。令和8年分(2026年分)までは現行どおり最大65万円です。個人住民税には翌年度の令和10年度分から反映されます。

今まで紙で申告して55万円の控除を受けていました。何もしないとどうなりますか。

令和9年分から控除は10万円になります。複式簿記で記帳していても、e-Taxで送信していなければ改正後の65万円の要件を満たさないためです。国税庁も「令和9年分以降は書面申告の場合の控除上限額は10万円となります」と明記しています。e-Taxへの切り替えが最優先の対策です。

簡易簿記で売上が1,000万円を超えていると、本当に控除がゼロになりますか。

なります。判定は所得ではなく収入金額で、その年の前々年分で見ます。令和9年分なら令和7年(2025年)の収入金額です。ただし不動産所得については事業的規模の人だけが対象外になり、業務的規模の人は改正後も最大10万円の控除を受けられます。事業所得と不動産所得は別々に判定します。

優良な電子帳簿とデジタルシームレス保存は、どちらを選べばよいですか。

どちらか一方を満たせば75万円になります。すでに優良な電子帳簿の届出を出して65万円控除を受けている人は、そのまま75万円へ移行でき、届出書の再提出も不要なのでルート①が近道です。会計ソフトが銀行口座やデジタルインボイスと自動連携している人は、ルート②のほうが追加の手間が少ない場合があります。まずは使っている会計ソフトがどちらに対応しているかを確認してください。

現金主義で記帳しています。75万円の控除は受けられますか。

受けられません。現金主義による所得計算の特例の適用を受けている場合、65万円と75万円の青色申告特別控除は対象外です(10万円の控除は適用できます)。これは現行制度でも同じ扱いで、改正後も変わりません。

参考リンク

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断については税務署または税理士にご確認ください。実務の細目は今後の政省令・国税庁の案内で追加・変更される可能性があります。

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公開日:2026年08月20日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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